2024年11月21日(木)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年10月31日

瞑想や呼吸法はうつ病を防ぐ

――脳をコントロールする自我、つまり帯状回がストレスなど多様な要因で機能が弱まってしまう。そうすると動物脳を抑え込めなくなり、うつ症状を引き起こすことになるのですね。では、機能低下した帯状回を正常に戻すには、どのような方法をとればいいのでしょうか。

篠浦:緊急的な場合は薬の力に頼ることも必要でしょうが、本質的には帯状回の血流を増やし神経細胞を太くすることだと言えます。具体的には“瞑想”が最も効果的な方法でしょう。怪しげなイメージを抱く人もいるかもしれませんが、瞑想をすることで帯状回の血流が増えるのはファンクショナルMRIでエビデンスがあり確認されています。血流が増えることは、自我の領域の神経細胞が太くなり動物脳をコントロールできるので自然に気持ちが落ち着く、頭が働くようになります。

 呼吸法もゆっくりと息を吐くことで扁桃体をコントロールできます。扁桃体は刺激されると過呼吸になります。自分を脅かす敵が出現すれば、呼吸が荒くなるでしょう。そこでゆっくりと息を吐けば扁桃体で感じる刺激を抑えることができる。帯状回が扁桃体をコントロールしていることになります。それと副交感神経を活性化させます。腹式呼吸による効果はこの2つがはっきりと分かっています。

――自我の領域は外科的な方法で改善させることはできないのでしょうか。

篠浦:私は脳腫瘍の摘出手術などをできるだけ覚醒下で、つまり麻酔で眠っている状態ではなく意識のある状態で行います。手術中の患者さんの様態を見ながら進めますので、術後の経過を事前につかめることができます。なかには帯状回周辺に腫瘍がある患者さん手術します。ある患者さんは帯状回の後ろ側に腫瘍があり、とろっとした感じでゆっくりとしか話せず、数字も逆に数えられませんでした。ところが腫瘍を取り除くと術中ですが突然、はっきりと話し数字も逆に数え始めました。

 これは腫瘍などで自我領域が圧迫されたことが原因ですが、ストレスなどで自我領域に異常が生じた場合は、外科的な方法で改善する方法は確立されていません。欧米では、うつ病患者に電極を埋め込んで扁桃体を刺激し改善させる手術が行われていますが、私には眉唾としか思えません。何割かの成功例でしかないはずです。

 脳は極めて複雑です。解明は進んでいますが、ピンポイントでうつ病を治す場所が特定できるほどメカニズムは分かっていません。


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