中国政府との契約はスプレッドシートにまとめられており、1万元(約21万円)から550万元(約1億2000万円)の複数年契約まであるようだ。また、売り上げ目標も掲げられており、ベトナム経済省40万元(約836万円)、ベトナム内務省35万元(約730万円)、ベトナム総合統計局35万元などの表記も見られる。これが高いのか安いのかはわからないが、興味深い。
気になるiPhoneのハッキングツール
漏えいしたiSoon社の製品マニュアルには、アップル社のiPhoneを標的にした製品もあるようだ。標的にしたiPhoneから携帯電話の基本情報やGPSの位置情報などをリモートで取得できるツール使用料が年18万元(約380万円)とある。
これはイスラエル政府がiPhoneの盗聴に利用しているハッキングツール、ペガサス(Pegasus)の「50万ドル(約7500万円)から」という価格設定よりはるかに安い。よほど低機能なのか中国政府向けの特別価格なのだろうか。このツールが本当に使い物になるのかは、購入して確かめるしかないが、スマートフォンも簡単に盗聴できることは肝に銘じたい。
APT41との関係が疑われるiSoon社
中国国家支援グループの一つであるAPT41(Barium、Suckfly、Amoevaなどの別称がある)との関係もチャットメッセージから窺い知ることができる。APT41は金銭目的のサイバー犯罪を行うハッカーグループで、2019年頃から身代金要求型ウイルスであるランサムウェアを使用し始め、ビデオゲーム会社、大学、通信プロバイダーなど100以上の企業・団体にハッキングを仕掛けており、20年には米国司法省から指名手配されているグループである。
APT41はとりわけ中国国家安全部と深いつながりがあるといわれているハッキンググループであるが、そのグループとiSoonのCEOウー・ハイボが接触していたこともチャットメッセージからわかる。APT41との接触に成功したことを祝うために飲みに行こうと幹部を誘ったことや「成都404」というAPT41配下のハッカーグループへの100万元(約2000万円)の支払いが遅れたため関係が悪化したことなどがわかる。