2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月5日

 国防大臣として彼は老朽武器近代化を進め、仏ラファールや米F15等の大規模調達を実施した。昨年6月のシャングリラ対話ではウクライナ平和プランを提案したが、ウクライナは拒絶し、ウィドドは距離を保った。

 選挙に向け、ウィドドとスビアントは協力を強化。ウィドドの36歳の息子ギブラン・ラカはスビアントの副大統領候補になったが、法律は40歳以下の副大統領就任を禁じていた。

 10月に憲法裁判所は一定の政治職を務めた候補への適用を柔軟化し大統領選参加の道を開いた。裁判所長官はウィドドの義兄で、人権活動団体はこの判示を批判している。

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こじれた現職の「後継」

 今回のインドネシアの大統領選挙が注目される理由はいくつかある。まず、過去2期10年間大統領務めた現職ジョコウィ大統領は、再選制限により今回の選挙には出馬できず、新顔に替わること。そして、これが、世界第4位の人口の民主主義国で、近年5%を超える成長を続ける主要20カ国・地域(G20)の重要な一員(現在17位のGDPは2040年代には日本を抜いて4位になるとの見通し)の大国インドネシアの今後の政策にどのような影響を与えるのかが注目されていることである。

 次に、選挙結果をどう見るか。今回の選挙は、第一に、いまだに7割強の支持率を誇る現職ジョコウィ大統領への支持を取り合う競争、誰がジョコウィ大統領の政策をより確実に引き継ぐかを巡る選挙だったと言えるだろう。

 本来は、ジョコウィは、自らの出身母体・支持基盤である議会最大与党の闘争民主党が公式に支持するガンジャール前中部ジャワ州知事を支持すべき立場にあるが、そうせず、代わりに、自身の次男であるギブラン(36歳)を、正副大統領選候補は40歳以上とする法律の解釈を憲法裁判所に持ち込んでまでプラボウォの副大統領候補に押し込み、プラボウォがジョコウィの政策を完全に引き継ぐことを確保し、プラボウォ支持を明確にした。

 ガンジャールもジョコウィの政策承継を掲げたが、結局ジョコウィの支持層獲得競争に敗れ、22年中は世論調査で一貫して維持していたトップの座を、23年後半にはプラボウォに譲り、その後一層失速。最終的には、出口調査でプラボウォ58%、ジョコウィの政策に明確に反旗を翻した第三の候補アニス25%にも及ばず、最下位の17%に留まった。


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