2024年12月15日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年9月27日

 「日本の現場は進み過ぎている。追いつくのに10年以上かかる」。フィリピンのベンゲット州フェリペ副知事から驚嘆の声が挙がった。

 2023年8月28日~9月1日にバングラデシュで開催された研修会「農業生産性向上のための知識移転に関するトレーニングコース」に参加したときのことである。

 アジア生産性機構(APO)とバングラデシュ国立生産性機構(NPO)が主催するこの研修会には、インド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、ネパール、タイ、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾、フィジーのアジア13カ国・地域の農業担当職員や専門家24人が参加した。多くは30歳代、40歳代といった若手で、講義(1日目、2日目、4日目)や現地視察(3日目)、カントリーレポートの発表(2日目~5日目)、行動計画のグループ討議と発表(5日目)を通じて、各国の農業普及とICT活用などを学び、帰国後に行動計画を作成した。

研修会には、各国のこれからの農業を担う若手が参加した(筆者提供、以下同)

 筆者は、途上国の農業組織づくりを支援するアジア農業協同組合振興機関(IDACA、東京都町田市)の推薦を受け、この研修会の「リソースパーソン」(主要な講師)という立場で、インド、バングラデシュの専門家とともに研修会の期間中に3回にわたり、日本の普及事業(戦後から国の指導のもと都道府県職員によって行われている公的指導事業)、農業協同組合(JA、農協)活動の概要、スマート農業(ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業)の現場での活用について講演し、グループ討議の際には助言を行った。

 筆者の報告を通じて、研修参加者が最も興味を持ったのは日本の生産者の能力の高さだ。生産者の多くが高等教育を受けており、公的普及指導員と対等に情報交換できるレベルであることである。研修参加者の国々では、生産者の多くが初等教育しか受けていないことが背景にあるようだ。

 その一端を示す例として、国と県がスマート農業を生産者と一緒に進めていること、生産者に自動操舵トラクターやドローンなど最先端のスマート農業技術を受け入れる素地があり、すでにかなりの割合の生産者がこの先端技術を取り入れていることに研修参加者が感銘を受けたようである。冒頭の発言はそこから出たものである。

 筆者もまた、海外からの発表や現地視察によって日本農業の魅力が見えてきた形だが、研修で明らかになった日本の農業の姿について、以下、言及したい。


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