2024年5月11日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年9月27日

 また、中進国と言えるインドネシアなどでは、日本と同様、若い農業技術指導者の育成、つまり若い指導者への技術伝承も課題のようだ。アジアと言っても進展状況にかなり差があるため、日本に比較的近い国々と共通する問題点を共有できたのも大きな成果であった。今後も問題の経過を共有しながら、解決策を模索したい。

日本経済が農業から学ぶべき点

 日本では、長期にわたる経済的低迷を「失われた30年」と表現し、農業も含めて、停滞していると考えられている。しかし、アジアなど海外から日本の農業を見ると、ここ10年間、農家年齢の高齢化・就農人口減少など急速な構造改革が進み、これに対応する形で生産者は、労働力の省力化などに舵を切り、スマート農業など最新技術が飛躍的に普及していることがよく分かる。

 そしてその事実を支えてきたのが、長い間、「考える農民」を目指し、生産者を育成してきた公的普及組織であり、支援し続けたJAであると筆者は考える。日本の農産物の品質が世界的に高いと認められているのは、生産者の教育レベルが高いことと創意工夫の賜物で、それを可能にしたのが公的普及組織とJAによる長年の指導であるということができよう。そしてそのことが、今回のアジア各国の反応から言い過ぎでないことがよくわかった。

 ただし、JAが生産者にいまだにファックスで情報提供していることは、他のアジアの国々のデジタル化の進展とは異質であった。スマート農業が普及する日本農業の現場ともギャップがある。ChatGPTなど生成AIが生産者に普及しつつある今、普及組織、JAともにAIを含めたデジタル化に迅速に対応していく必要がある。

 このように、海外で日本の農業は高く評価されている。国内では、農業が産業として大きな課題を持っているとみられているが、課題を乗り越えるため、改革を進めてきた姿もある。それが日本の他の産業の手本の一つとなり得ると考えても良いのではないだろうか。

世界から見た日本農業の現状や課題、解決策を示す連載「お花畑の農業論にモノ申す」の記事はこちら

   
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