近年、コメの成分にどのような機能性があるのか研究が急速に進んでいる。ある国立大学の難治疾患研究所では、コメの成分が腸の免疫細胞をどのように活性化させるか研究を続けており、コメの品種により免疫を活性化させるものや制御するものもあることがわかってきた。
こうしたコメの品種による機能性の違いに着目し、個人の特性に合わせたコメの摂取で健康効果があるという研究も進んでいる。品種による機能性の違いは、皮膚の保湿や肌荒れの予防に効果があるとされるグルコシルセラミド(以下、セラミド)の含有量がカギを握っている部分もあり、含有量の多い品種で製造した加工玄米が消費者庁から機能性表示食品として認証を得ている。また、東京農業大学では鉄分を多く含んだ品種の育種もはじまっており、このコメを食べることで貧血を予防しようという取り組みも進んでいる。
これまで市場で取引されるコメの評価は「産地銘柄」の食味の違いに重きが置かれたが、日本で生産されるコメの多くがコシヒカリ系のコメになり、食味差異は以前ほどではなくなり、品種の違いによる価格差も大幅に縮小している。今後、コメの価値を決める新たな要素として〝機能性〟がクローズアップされることになりそうだ。
コメの栄養を活用した商品開発
今年8月に東京ビッグサイトで開催された「ウェルネスフードアワード2023」(一般社団法人ウエルネスフード推進協会主催)のアンチエイジング部門で、コメ卸のミツハシ(横浜市金沢区)が開発した機能性表示食品の加工玄米が金賞を受賞した。アンチエイジング部門とは、抗酸化、肝機能改善、血行促進、ホルモンバランス、肌改善などを目的とした商品を対象として審査された。
金賞を獲得したのは「澄SUMU」という商品で、「肌が乾燥しがちな方の肌の潤いを維持する機能(バリア機能)」を謳っている。「機能性表示食品としての確かなエビデンスのもと肌の潤いを維持するという機能面」と「玄米でありながらおいしく続けやすい」という両面が評価された。また、無洗米加工品であることから「水質汚染の軽減・防止」に貢献するという環境問題への配慮も注目されている。
ミツハシは、玄米や精米の販売以外に炊飯事業や冷凍米飯事業を展開している。「3年前にコメの持つ健康機能をクローズアップしたいということで、当社が考えるコメの機能性に着目して独自の原料を開発することにした」と事業開発部の有馬哲也本部長が語る。組織横断型の取り組みで「お米健康プロジェクト」と名付けた。