2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月13日

 21年、ロシアは周回衛星を撃ち落とす対衛星攻撃兵器の実験を行った。これによりロシアは、理論的には、 衛星攻撃のために一群の原子力兵器を発射し、宇宙空間内に立ち入り禁止区域を設定することさえできる。しかし、ロシアのそのような行動は、宇宙での核兵器使用を禁止する条約に違反するのは無論だが、自らの破滅にも繋がるものである。

 米国は、宇宙空間で絶妙な機能を発揮する一群の諜報・軍事システムを保有している。しかし、それらの卓越した機能を有するセンサーや技術装置は、少数の衛星群の中に配備されている。

 それらの衛星群は、敵の恰好の餌食になる。よって米国は、さらに多くの小型衛星を用いて「より抗堪性の高いシステムを構築する必要がある」と、21年、当時宇宙軍長官だったジョン・レイモンド大将は述べた。技術が進化するにつれて、スターリンクなどの営利企業は5000 個以上の衛星を用いるようになり、攻撃により破壊され尽くされにくいシステムを開発している。

 ウクライナは、スターリンク端末への接続が可能となったお蔭で、21 世紀 の「アルゴリズム戦争」を戦うための手段を得た。ロシアは宇宙空間から発信されるデータを妨害したり、なりすましによる妨害を試みたりしたが、スターリンクの エンジニアはデータの流れを維持する独創的な方法を見つけた。

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戦場が陸海空から「宇宙」へ

 今日、宇宙空間に1万以上の衛星が存在する。過去3年間には年間約2500機が軌道に投入され、2030年にはその数6万に達すると聞く。 通信、放送、金融、交通輸送、気象観測、資源探査、農林水産業、温暖化対策など、地上の多くの産業活動も社会生活も宇宙空間に存在する衛星にさまざまな形で既に依存するようになっている。

 また、地理測位、通信、災害監視、環境監視など、宇宙空間は既に地球上の各国政府の政策遂行に欠くことが出来ない役割を得つつある。そして、その諸政策には安全保障政策の諸目的に資する役割が与えられ、 軍事作戦行動の一部になりつつある。  


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