2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月13日

  今日、生起する新たな戦略環境は、国防政策の継続的見直しを求める。既に海空に拡大した戦略空間は、今や宇宙空間に及び、電子通信空間にも忍び込む。それに伴い、兵器の種類や戦闘概念も多様化し、 国家の安全保障政策の基本も再構築を余儀なくされる。これらは核抑止力に作用し、核軍縮にも影響する。

衛星群を大量破壊の恐れ

 ウクライナ戦争は、イグネイシャスが言うように、「21世紀のアルゴリズム戦争」であり、宇宙空間に配備された衛星群を用いた作戦が地上戦闘の勝敗を決する重要な要素として機能することが実証されつつある。衛星群の数がこれほど多くなると、無論予想される通り、個別撃破では面倒だと、大量破壊のために核エネルギーが利用されそう になる傾向を帯びるのは歴史が証明している。

 宇宙を放射能で汚染すれば、人類の宇宙への進出は大きな制約を受ける。そして、それはロシアにとっても自滅行為である。

 宇宙空間における諸国家、諸主体の活動を規律する法整備は、その必要性に関わらず進んでいない。(a)宇宙開発を先行する諸国は規制に反対し、(b)追随する諸国は先行国の活動を規制して将来の利益を確保しようとし、(c)未だ活動に参加していない諸国は宇宙での他の諸国の活動からの不利益を小さくすることに強い関心がある。このように、諸国家の間の利益は、大きく乖離している。

 既に軍事利用は始まっているが、この先、宇宙空間が人類の進歩のための協力の場となるか、人類の対立殺戮の場となるか、子々孫々に対し、この時代に生きる者の責務は重大であると感じる。

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