2024年7月13日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年4月21日

 The next opportunity came from Sumitomo Bank, one of the largest banks in Japan. Michel Péretié, the CEO of Bear Stearns in Europe and based in London, had repeatedly suggested to the New York leaders that Sumitomo had an interest in doing “something structurally” with Bear Stearns,(後略,p418~419)

 住友銀行(三井住友銀行のことか)がベア・スターンズとの提携に関心を持っていることを、ベア・スターンズの欧州代表がニューヨークの幹部にたびたび伝えた--というのだ。これは07年秋時点の話で、経営陣は関心をほとんど示さなかった。08年初めに役員会の席で再び住友銀行が9.9%~30%の間でベア・スターンズに出資する提案が遡上にのぼったという。結局、実現しなかったことはご存知の通りだ。

 第3部ではさらに、08年9月のリーマン・ブラザーズ破綻劇の舞台裏も迫真の筆致で描く。権勢を誇ったウォール街のトッププレーヤーたちが「次は自分たちの会社がつぶされる」との恐怖におののくさまには驚かされる。ニューヨーク連銀に集まったウォール街の幹部たちの間で、リーマンの破綻が避けられなくなった後、次のような会話が交わされたエピソードを紹介している。

 モルガン・スタンレーのジョン・マックCEOが「たぶん次はメリルリンチも破綻させることになるな」と発言。その場にいたJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは驚いて言い返した。「そんなことになったら、次はお前のところに(大手運用会社の)フィデリティからすぐに電話がきて、カネはもう貸せないと言われることになるんだぞ」と。ドミノ倒しが起きる危険性を恐れたわけだ。当時の雰囲気をよく伝える象徴的なシーンだ。ただ、筆者はその場に居合わせた関係者から取材をしたものの、マックCEO自身は発言を否定、ダイモンCEOは記憶にないとしているという。

砂上の楼閣 ウォール街

 本書のタイトル HOUSE OF CARDS とは、直訳すると「トランプのカードで組み立てた家」で、もろく崩れやすい組織や計画などを意味する。それはもちろん、ベア・スターンズだけでなく、ウォール街を中心とする金融界全体のことをも指しているはずだ。

 アメリカの国民もウォール街で何が起きたのかを正しく理解している人は多くない。今なお不安定なままの金融情勢を前に、自分たちが直面している危機の本質をわかりたい一心で人々は本書を手にするのかもしれない。米ニューヨークタイムズ紙(WEB版)の4月17日付ベストセラーリストのノンフィクション単行本部門(注)で4位と、5週連続でトップ5にランクインしている。

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