陸奥湾のイカナゴがほとんどいなくなって禁漁になったのが13年でした。大阪湾や伊勢・三河湾よりも北に位置している漁場が先にダメになっています。
さらに、とどめを指すように減った理由で矛盾していることがあります。13年当時、イカナゴがいなくなった理由は、何と「水温の上昇」ではなく、「水温の低下」だったという記事がありました。
イカナゴに限らず、資源が激減しているスルメイカでも、水温が高いから減っているという報告もあれば、低いからという報告もあります。
水産資源が乱獲で減ってしまったのに、それを漁業の影響ということには触れずに、無理やりに環境要因に責任転嫁されてしまい、国民がその事実を知らないことが元凶です。このためにさまざまな魚種で資源の増減に関する説明に「矛盾」が生じています。
生物多様性とイカナゴ
イカナゴはシシャモ(カラフトシシャモ)などの小魚と同様に、他魚種の重要なエサにもなっています。資源が減れば、人間が獲り尽くして困るのと同様に、それを捕食していた魚種にとっても深刻な問題となります。
例えば、ノルウェーでのシシャモの漁獲枠設定に際しては、マダラなどの他魚種が食べる分も考慮して漁獲枠が設定されています。また、シシャモやイカナゴ漁に関して、マダラなどの混獲が厳しく管理されています。
日本のように漁獲枠も科学的根拠もほぼなく、資源崩壊が近づくとさまざまな理由を付けて環境や外国への責任転嫁に走るのとは大きな違いです。言うまでもなく、現状の漁業に未来はありません。
瀬戸内海だけでなく、日本全国そしてイカナゴを科学的根拠に基づいて管理しているノルウェーや欧州連合(EU)などの漁業と比較すると、減った原因とその対策がはっきり見えてきます。
海がきれいになりすぎたから減った?
海がきれいになりすぎたことが原因とも言われています。ところで、海がきれいになり過ぎたから減ってしまったのなら、江戸時代や室町時代にイカナゴはいなかったのでしょうか? ノルウェーやデンマークの綺麗な海にイカナゴが、日本より「けた違い」に多いのはなぜなのでしょうか? 同じく今年休漁となった宮城県の海も、きれいになりすぎてプランクトンが減ったから、イカナゴが獲れなくなったのでしょうか?
「魚が消えていく本当の理由」が理解されずに水産資源が減少を続けていることは、実に痛ましいことです。それらの理由が関係ないとは言いませんが、最も大きな力である、漁業という人間の力をあまりにも過少評価していないでしょうか?