2024年6月20日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月9日

 アルメニアは、18年にパシニャン首相が革命により政権を奪取する以前はロシアとの友好関係を維持し、政治、経済、安全保障の多くの部分をロシアに依存していた。他方、20年9月1月のナゴルノ・カラバフ戦争以降、ロシアがアゼルバイジャン寄りの立場を取り続け、結果として、23年9月のアゼルバイジャン軍によるナゴルノ・カラバフへの大規模攻撃に発展したことにより、ロシアが支援する野党などの一部国民を除いて、アルメニア政府およびアルメニア国民のロシアに対する信頼はほぼ消滅した。

 アルメニア政府は非公式には「ロシア離れ」を決定しているともみられる。これを受け、米国とEUはアルメニアにおけるロシアのプレゼンスを排除すべく、政治、経済、安全保障面での関与を強めている模様である。しかし、欧米諸国がロシアに代わってアルメニアの安全保障と経済を保障することは困難のようにも思われる。アルメニア政府は欧米とは協調しつつも、一方でロシアとも適当に付き合って自国の安全保障と経済の安定を図り、「生き延びる」方途を検討する方が良いのかもしれない。

トルコ、イランの動きにも注目

 アルメニアの敵対国、アゼルバイジャンについてはどうか。アゼルバイジャンの庇護者はトルコであり、20年のナゴルノ・カラバフ戦争でのアゼルバイジャンの勝利はトルコの支援によるところが大きい。ロシアは、ウクライナ制裁の「抜け道」としてトルコとアゼルバイジャンの協力を必要とすることから、ナゴルノ・カラバフ問題ではアゼルバイジャン寄りの立場を強めたとの見方が一般的だ。

 一方、アルメニアと国境を接するイランはアゼルバイジャンのアルメニアへの侵攻の可能性を危惧しており、伝統的に良好な関係を維持しているアルメニアとの関係強化の姿勢を強めている。アルメニアとイランとの関係強化については、欧米諸国は神経質になっている。

 南コーカサス地方においては、欧米とロシアに加えて、同地域と地政学的に直接の利害関係を持つトルコとイランの動向にも十分注視する必要がある。

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