2024年6月18日(火)

教養としての中東情勢

2024年4月11日

 今回もハメネイ師は同様の要求をしているとみられている。だが、制裁下で経済が低迷するイランはイスラエルや米国との直接衝突は回避したいのが本音。報復の標的にはイスラエルの反撃を招かないような対象を選ぶとみられているが、「イランの報復であることを知らしめる」形でペルシャ民族の誇りを保ち、一方で「イスラエルの反撃を招かない」作戦は相当困難だ。

ラマダン明けにも大きな賭け

 米紙などによると、軍事関係者も報復はヒズボラやイラク、シリアの親イラン民兵組織、イエメンのフーシ派などイランの支援組織によるものではなく、イラン自身による攻撃になると予測している。実際には弾道ミサイルによる攻撃が想定されているが、支援組織との共同作戦もあり得るだろう。

 本来なら在外公館の攻撃には同じ対象を狙うことが想定されるが、現実にはイスラエルが大使館を置く当該国への配慮などから難しい。テルアビブなどイスラエルの都市など本国への直接攻撃では、イスラエルの反撃を招くのは必至。そうなれば米国もイスラエルへの軍事支援に動くのは確定的だ。

 となると選択肢は限られてくる。ベイルート筋によると、その中で浮上しているのがイスラエル北東部のゴラン高原へのミサイル攻撃だ。

 シリア領だったゴラン高原はイスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領、81年に自国へ併合した。シリア、レバノン、ヨルダンと接しており、軍事戦略上極めて重要な一帯だ。必ずしもイランからではなく、イスラエルに近いシリアから発射する可能性がある。

 高原の広さは約1200キロ平方メートルで、ダマスカスまで60キロメートルに位置しており、肥沃な農業地帯である。イスラエルの水源でもあるガラリヤ湖があり、ユダヤ人の入植地が30カ所、約2万人のユダヤ人が居住、イスラエル軍が駐留している。イスラム教ドルーズ派のシリア人2万人も住んでいる。

 国連安保理はゴラン高原の併合を無効だと決議しているが、米国のトランプ前大統領はイスラエルの主権を認めると明らかにしていた。イランにとって、ゴラン高原への攻撃は違法に併合された地であっても「イスラエル本国を攻撃した」と主張でき、軍事力の誇示が可能だ。イスラエル側へ与える損害も大きくないとみられることからイスラエルの反撃を必ずしも招かないシナリオだろう。

 だが、こうした作戦は大きな賭けだ。ミサイル攻撃によって想定以上の損害が出る恐れもあり、また損害が小さくてもイスラエルがミサイルで反撃したり、イラン本土を空爆したりするリスクはある。「革命防衛隊は二律背反のジレンマにさらされている」(ベイルート筋)のは間違いないが、9日のラマダン(断食月)明けにも報復作戦が実施されるかもしれない。


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