2024年12月23日(月)

教養としての中東情勢

2024年3月14日

 ガザ戦争は5カ月を過ぎたが、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘はイスラム教の聖なるラマダン(断食月)に入っても終息の見通しはない。こうした中、米国のバイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が公然と非難合戦を展開、関係が極度に悪化している。背景にはネタニヤフ氏の「バイデンを“生贄”に生き残りを図る」という政治的ギャンブルがある。

最近になり、バイデン大統領とネタニヤフ首相の対立が露わになりつつある(AP/アフロ)

不首尾に終わった「ラマダン停戦」

 イスラム世界は3月11日からラマダンに入った。「1カ月にわたって日の出から日の入りまで日中の飲食を断つ」というイスラム教徒の戒律が求められる月だ。信仰心が極度に高まり、イスラム教徒への迫害や攻撃に過激に反応する人々が増え、ジハード(聖戦)が叫ばれる時期でもある。

 「ラマダン停戦」が期待されたのも、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続けば、ユダヤ人に対する憎悪が深まり、より収拾がつかなくなることが懸念されたためだ。しかし、今月初めまでカイロで行われた停戦交渉はイスラエルとハマスの主張が対立、不首尾に終わった。

 イスラエルと仲介役の米国、カタール、エジプトは停戦条件で基本合意していたが、ハマスが最後まで抵抗してうまくいかなかった。基本合意は6週間の停戦と40人の人質解放、数百人のパレスチナ囚人の釈放が大枠だった。しかし、ハマス側が無期限の停戦にこだわり、イスラエルが人質の生存者リストをハマス側に要求したこともあって協議はまとまらなかった。

 ハマスが拘束している人質は134人とされるが、イスラエル軍の空爆などで死亡した人質もおり、実際に生存している人質は約100人とみられている。停戦交渉中も戦闘は続き、ガザ側の住民らの死者は現在、3万1000人以上に達している。今後、150万人が避難する南部ラファにイスラエル軍が侵攻すれば、パレスチナ人の犠牲者は一気に増えるだろう。


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