2024年12月11日(水)

教養としての中東情勢

2024年4月11日

レッドライン越えたネタニヤフ

 ガザ戦争が始まってから7日で半年が経過した。戦争の終わる見通しは全くたっていないが、それにしても最近のイスラエルのネタニヤフ政権の戦争遂行ぶりはタガが外れた感がある。イラン大使館攻撃は「完全に超えてはならないレッドラインを踏み越えた」(識者)とされ、ガザで活動していた食料支援団体「ワールド・セントラル・キッチン」の米国人ら7人を攻撃で殺害した。

 この攻撃で米国のバイデン大統領のネタニヤフ首相への怒りは「頂点に達した」(ニューヨーク・タイムズ)。大統領は首相との緊急電話会談で、パレスチナ自治区ガザで民間人の保護策を講じなければ「支援を見直す」と最後通告し、停戦をあらためて要求した。首相は「戦争の中で起きた悲劇」と釈明、誤爆だったとしているが、作為的な攻撃だったとの見方も根強い。

 イスラエル国内ではイスラム組織ハマスに依然人質になっている家族らの政府に対する怒りは高まる一方だが、ネタニヤフ首相はあくまでもハマス壊滅まで戦争を続ける姿勢を崩していない。だが、首相の支持率は下落したままで、戦時内閣で国民の人気の高いガンツ元国防相は9月に総選挙を実施するよう要求、政権は崩壊の瀬戸際にある。

 戦争が終結すれば、政治生命も終わることを十分認識しているネタニヤフ首相は「さらなる戦争の拡大と長期化を狙っている」(識者)もようで、バイデン氏の圧力をなんとしても交わしながら、トランプ前大統領の再登場を待つ構えだ。イランの報復攻撃はこうしたネタニヤフ氏の思うツボになりかねない。

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