まだ続く燃料油価格激変緩和措置
激変緩和措置は、22年1月27日から基準価格をガソリン1L当たり170円、補助上限額を5円とする制度で始まった。コロナからの経済回復の重荷になる事態を防ぐため、時限的・緊急避難的な措置とされ、対象はガソリン、軽油、灯油、重油だった。
当初の計画では3月末までの2カ月間で終了する事業だったが、その後見直しと共に何度か延長され現在も続いている。対象も航空用燃料まで拡大された。
現在の制度では、基準価格168円、ガソリン価格の超過分が17円を超えると(価格が185円超)全額補助、17円までは補助率5分の3となっている。補助は元売りを通して行われ、今年4月11日から17日までの支給単価は1L当たり28.7円だった。
価格の抑制効果は、ガソリンで23.7円だ。事業は今年4月末で終了の予定だったが、延長が決まっている。
欧州連合(EU)主要国もエネルギー価格が大きく上昇した22年に、補助金あるいはガソリンにかかる税の引き下げにより支援したが、3カ月から9カ月の期間のみ実施し22年末までに支援制度を終了した。英国は、しばしば変更するガソリンへの物品税を22年3月に1L当たり0.5795ポンド(112円)から0.5295ポンド(102円)に引き下げ現在も維持している。
費用はいくら掛ったのか
ガソリン、軽油などには多様な税が課せられている。石油連盟によると23年度の税額は、消費税1兆9100億円を含め総額5兆7600億円になる。石油諸税3兆8500億円に総額2兆2129億円のガソリン税(53.8円/L)と総額9275億円の軽油取引税(32.1円/L)が含まれている。ガソリン税の内48.6円/Lの揮発油税と石油石炭税(2.8円/L)は一般財源になっている。
23年度の一般会計歳入(当初予算)69.4兆円の内、消費税を含めると約4.5兆円が石油系燃料からの税収だ。
ガソリン税の中には暫定上乗せ分25.1円/L、軽油取引税の中にも暫定上乗せ分17.1円が含まれている。上乗せ分は、本来であれば価格上昇時に減税されるトリガー条項制度の対象になっている。
ガソリンの全国平均小売価格が1L当たり160円を3カ月連続で超えた場合、暫定上乗せ分の課税を停止する制度だ。既に発動される価格に達しているが、発動することなく補助金が支出されている。
経済産業省によると、補助金の予算額は21年度から23年度までの補正予算額などを合計すると累計で6兆3645億円に達している。今年2月までの2年間に4.6兆円が使用されたと報道されている。
税収の多くが補助金として支出されるのであれば、トリガー条項を発動し、ガソリンと軽油価格を下げるべきだが、簡単にできない事情がある。補助金の対象に業務用などにも使用される重油と灯油が含まれているからだ。