補助金はどの産業を助けたのか
ガソリンへの補助額ばかり注目されるが、軽油、灯油、重油、航空燃料も補助対象だ。実績ではガソリンへの補助額は全体の半分もない。
会計検査院の資料によると、23年3月までの1年強の期間に30卸売り業者に計2兆9893億円が交付された。その内訳は、ガソリン1兆2849億円(全体の42.9%)、軽油9112億円(30.4%)、灯油2911億円(9.7%)、重油4391億円(14.6%)及び航空機燃料628億円(2.1%)となっていた。
灯油は、暖房、給湯などに、重油はボイラー、ディーゼル発電機などに利用される。円安と原油高の影響により上昇するはずの価格が、補助金により抑制された(図-2)。どの産業がメリットを享受したのだろうか。
業務部門での重油と灯油の消費量が多い業種は図-3の通りだ。L当たり平均30円の補助を受けているとすると、洗濯・美容・理容・浴場への補助額は年間300億円、宿泊業へ250億円と推定される。
物流業界は、当然大きな補助を受けている。22年度に輸送分野で消費されたガソリンは4390万KL、軽油は2460万KLだった。
ガソリン車の主体は乗用車だが、軽油の大半は営業車。軽油使用の自家用の乗用車の比率は、軽油消費量の5%に過ぎない(図-4)。
ガソリンと軽油に対する補助金の内約4割は、営業車、自家用貨物車に対する支援だ。
家計への影響が言われることの多い燃料油補助金だが、灯油、重油、ガソリン、軽油、航空機燃料が対象なので、半分は産業支援に用いられている。
クリーニング代、ホテル代、航空運賃、物流費などの値上げを抑制する効果はあったが、基本的には円安の影響を防ぐための政策を続けていることになる。