GXに浮かれている場合ではない
ドイツは農業部門に適用される軽油の軽減税率を廃止する計画だった。農業従事者は、燃料価格上昇に加えEUの殺虫剤の使用規制などのグリーンディール政策にも反発し、今年初めにベルリンの道路を封鎖するなど抵抗した。ドイツ政府は政策の変更を余儀なくされた。
脱炭素を進めようとしても、エネルギー価格の上昇に直面する現場の抵抗が強いのは世界共通だが、日本は脱炭素によるコスト上昇の前に補助制度を導入する有様だ。
日本政府は、GX(グリーントランスフォーメーション)の150兆円超の官民投資により、産業部門の脱炭素を計画している。EV、水素などの導入だ。
既に支援のため20兆円規模のGX経済移行債の発行が始まっているが、償還財源には28年から導入予定の炭素税による収入もあてられる。
燃料価格の抑制を必要とする産業部門が、4年後に炭素税によるコストアップを受け入れることができるのだろうか。
GXには痛みが伴うが、その痛みを受け入れる用意は政府にも国民にもないのではないか。国民の生活第一の政策を取るのであれば、GXと浮かれている場合ではない。
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