要は、中国の急速な軍拡に対して、米国もそれに対応できるだけの軍事アセットの実体面での備えを取るかどうかである。日本をはじめとする同盟国との協調は良いが、米国は自らがやるべき「宿題」を果たすべきであるとの訴えである。
その点については、米国内でも立場はまとまっていない。国内ファーストの立場があるし、「それでは軍拡競争になる」「緊張を煽ることになる」との議論もある。日本においても、そもそもの原因を作っているのが中国であることを横に置いて、米国の姿勢に異を唱える言説がすぐに現れる。
危機を予防するために軍備は必要
この論説の副題(「バイデンの外交は挑発的であるが、防衛戦略は十分に予防的ではない」)は、そうした議論に対する明確な反論になっていると思われる。軍備はいざというときのためであり、いったん有事の際には発動できなければならない。しかし、まずもって、危機を予防するために軍備は必要である。
特に、相手が急速に軍備を積み上げているときには、なおさらそれが当てはまる。もちろん、「安全保障のパラドックス」によって、危機に至らないための対話は必要であるが、対話だけで危機が回避できるわけではない。
ミードが狙いとしたと思われるこれら二つの点とも、日本の視点から見ても的確な指摘と評価したい。