また、ドラマでは父親が借金を残して亡くなったというエピソードがある。「借金があると生活保護は利用できない」「税金を滞納していると無理」というのも誤りである。
ただし、生活保護費から借金を返済することは原則として認められない。債務整理は相続放棄や「法テラス」の法律相談などを利用して解決を図ることになる。ちなみに、法テラスを通じて弁護士への依頼をした場合、生活保護を利用していれば費用の支払いが免除となる。
アルバイト収入の認定除外や進学準備給付金など優遇措置
生活保護世帯の進学支援については、いくつかの優遇措置が用意されている。もれなく周知を図るため、厚生労働省もリーフレットを作成し、自治体の窓口でも活用されている(厚生労働省「あなたの〇活応援します」)。
高校生がアルバイトで収入を得たものを、私立高校における授業料の不足分、学習塾の費用、大学等の受験料や入学金等にあてる場合は収入として認定されない。また、生活保護費をやりくりして進学時の費用に充てることもできる。
大学や専門学校に進学すると、その本人は生活保護世帯の対象からはずれ、自分の分の生活保護費が支給されなくなる。これを「世帯分離」という。ドラマで和真が語ったように、家から出る必要はない。
佐野家の場合は、世帯分離により約5万円の保護費が減額される。樹希は、自分の生活費や学費を奨学金やアルバイトで用意する必要がある。しかし、給付奨学金をはじめとした制度が整備されたことで、経済的負担は相当軽減された。詳しくは、「ひとり親世帯の進学率が1.5倍に 奨学金が拓く未来」を参照されたい。
このほか、高校等を卒業して進学する生活保護世帯の人には「進学準備給付金」が支給される(自宅生10万円、自宅外生30万円)。
ホームヘルプサービスや無料塾などの支援も
生活保護制度以外にも、困難を支えるための制度はある。
樹希の母親は、パニック障害のために日常の家事もままならない状態にある。障害が原因で日常生活の支援が必要となる場合には、障害者総合支援法に基づく、さまざまなサービスを利用できる。
ドラマに登場した「ホームヘルプサービス」はその一つであり、食事の用意や洗濯、掃除などの生活全般の援助を行うものである。各自治体では、サービス利用ガイドを作成している(新宿区「障害者支援法に基づくサービス利用ガイド」)。
また、樹希やアベルが通っていた「無料塾」とは、文字どおり無料で通うことができる学習塾である。生活困窮者自立支援制度には、「生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業」があり、ほとんどすべての自治体(97.8%)が取り組んでいる。このほか、民間の有志が自治体からの委託・助成ではなく独自で取り組んでいる例も少なくない。
これらの制度は、生活保護を利用していれば、ほとんどの場合、利用料は無料となる。