2024年4月30日(火)

未来を拓く貧困対策

2024年4月12日

 政府一般支出の半分を占める社会保障費。私たちの生活にも身近な存在であるにも関わらず、学校教育でほとんど学ぶ機会がない。教員にもネガティブなイメージが残り、目まぐるしく変化する制度についていけない。

 貧しすぎる社会保障教育をどうアップデートすればいいのか。『15歳の社会保障』(日本評論社)の著者である社会福祉士でNPO法人Social Change Agency代表理事の横山北斗さんへのインタビューを通じて考える。

ネガティブイメージ満載の社会保障

 年金、医療、介護、福祉、労働……。日本で生活していくうえで、社会保障制度に無縁の生活をすることは不可能である。

 会社員をしていれば、年金保険料、医療保険料、雇用保険料が給料から天引きされる。40歳を超えれば、更に介護保険料も加わる。

 2023年度の予算で国の一般歳出に占める社会保障関係費の割合は約51%。国庫負担は30兆円を超え、他の追随を許さないダントツの1位である。

 この社会保障、ネガティブなイメージに満ちている。

 「高齢者は年金をもらいすぎだ」「忙しくて病院に行く暇なんてないのに保険料だけとられる」「介護保険料値上がりしすぎ」「怠け者が生活保護を受けている」。

 「政府の行う社会保障政策を信用できる」のはわずか1割半、社会保障に対する満足度も7割強が不満を持っている(社会保障とくらしの助け合いに関する調査)。

 実際、社会保障は「どこを切っても血がでる」と言われるほど課題が山積している。メディアの報道も、深刻な課題や制度の不備にフォーカスしたものが大半を占める。繰り返されるネガティブキャンペーンによって、社会保障のイメージは悪化する一方である。

貧しすぎる社会保障教育

 これを更に加速させているのが、学校における貧しすぎる社会保障教育である。

 高等学校でさえ、社会保障教育に割くことができるコマ数はせいぜい1~2コマ。1コマ45分と考えると、わずか90分に過ぎない。

 教える側の教員に社会保障にネガティブなとらえ方をしている者もおり、忙しくて頻繁に変わる制度の最新情報を学ぶ時間もない。加えて、厚生労働省が作成する教材はどれも分量が多すぎて、内容が難しすぎる(社会保障教育モデル授業に関する検討会資料3)。

 現場からの問題提起を受けて、厚労省は新しい授業例を示している(年金の授業例)。

(出所)厚生労働省「社会保障教育モデル授業等に関する検討会(第1回)」資料3,p.2.

 ただ、正直なところ、この授業を受けることで社会保障のネガティブイメージが払しょくできるかは、はなはだ疑問であると言わざるをえない。


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