2024年11月21日(木)

はじめまして、法学

2024年5月22日

 そして、調停も整わない場合には、最終的に、裁判離婚となります。裁判離婚の場合、一方の当事者が離婚を望まないのに、裁判所の力で強制的に離婚が成立することになります。そのため、民法770条1項*1が定める法定離婚原因がある場合にのみ認められます。結果として、離婚のために、多大な時間や労力を費やす場合が少なくありません。

*1 【民法770条】①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 1 配偶者に不貞な行為があったとき。
 2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
 4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

不貞行為をした者からの離婚請求は認められるのか?

 たとえば、A夫が、勝手に家を出てB子と長年同棲をしたうえで、法律上の妻であるC美に離婚を求めた場合、その離婚の請求は認められるのでしょうか? とくに、C美は、離婚したくないと思っている場合に、原因を作ったA夫(「有責配偶者」といいます)が、みずから離婚を求められるとしたら、少し虫がよすぎませんか? 

 これに関して、最高裁判所は、以前、夫の勝手な請求を認めるのならば、妻は踏んだり蹴ったりであるとして、夫からの離婚請求を認めませんでした(最高裁昭和27年2月19日判決)。しかし、その後、徐々に、実質的な夫婦関係に着目し、実質的に破綻している場合には、民法770条1項5号の離婚原因に該当し、有責配偶者からの離婚請求も認めるようになりました。

 最高裁大法廷昭和62年9月2日判決では、夫婦の別居が、両当事者の年齢・同居期間との対比において相当の長期間におよび、夫婦間に未成熟子が存在しない場合には、離婚請求を容認することが著しく社会正義に反するような特段の事情がない限り、有責配偶者からの離婚請求も認められるものとしました。

 この考え方は、破綻した結婚を清算したうえで、新しい人生を歩み始めるほうが、お互いのためであるとの発想に基づくものです。では、意に反して離婚を余儀なくされる配偶者(C美)の生活保障はどうなるのでしょうか?

 それは、形ばかりの婚姻を継続させるという形で実現するのではなく、有責配偶者から、財産分与・慰謝料請求・年金分割・子どもの養育費などを十分に支払ってもらうことによって実現していくべきものと考えられます。


新着記事

»もっと見る