しかしノルウェーのサバ漁は全く異なります。ノルウェーの場合は、サバがいないのではなく、少しでも価値が高い大きなサバを獲ろうとするために、巻き網でサバを巻いても小さければ逃がしてしまい、別の魚群を追いかけているのです。漁船の位置を示す上記のサイトには、その痕跡が残っていました。少しでも大きいの魚を求めて、小さい魚しかいなければ手ぶらで戻る結果、何回にも分けて獲っていることになるのです。
海の中には時期になると絨毯を敷いたように大量のサバが来ていますが、サイズが小さく価格が安いので獲りません。「魚がいても獲らない」という現象が起こっているのです。巻き網で巻いたサバは生きていますので、小さいサバは来年以降の漁獲用に海に逃がされるのです。「割り当てられた漁獲枠分のサバが漁獲できないのでは?」などと考える漁業者などいないのです。
日本の場合は、漁獲枠自体が大きすぎ、かつ厳格な個別割当制度にはなっていませんので、魚がいれば小さくても獲ってしまいます。見つけた魚を逃すことなどできないのです。これが、結果として漁業者を苦しめています。筆者が漁業者だとしても、現行の日本の制度では、見つけたら獲る以外の選択肢は残念ながらありません。
3割のサバが餌用に
ノルウェーは価値のない魚を利用
日本では実に3割ものサバが、単価の安い餌用にまわってしまっています。もったいない話です。「ローソク」や「ジャミ」と呼ばれる小型のサバは漁獲するべきではないのです。一方で、ノルウェーでは食用に回るサバが、99%以上で、餌に回るサバは、1%を下回ります。餌用の魚は必要ですが、何も1~2年待てば大きくなって価値が高くなるサバを、餌用にするようなもったいないことはしないのです。餌用には、イカナゴ等大きくなっても価値がない魚を使います。
2012年に34年ぶりに漁獲された北海道釧路沖のサバは、価値のある中・大型のマサバが主体でした。これは、東日本大震災で漁獲を免れたサバが成長し、北上したものである可能性が高いと筆者は考えています。
しかし昨年は、突然北海道沖でサバが漁獲されるようになったために、漁場から近い釧路港では冷凍設備や加工の準備が間に合わず、水揚げ処理能力がある八戸に水揚げされるケースが増えました。ただ、厳格な個別割当制度ではないので、獲れる時は一斉に獲って水揚げしてしまうため、水揚げ価格は、本来その魚が持つ価値より低く取引され、かつ処理に時間がかかって鮮度も価値も落ちてしまうというパターンとなってしまったのです。