2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月4日

 保護主義に変わったところで、米国の得になることは何もない。根本的な解決にならない。

 WTOは、米国がそれを無力化したため、中国の不公正慣行に圧力を掛ける力を失っている。ルールを変更しようとしても今のWTOにはできない。

 記事は、今回中国に対し要求リストも出していないと指摘、「WTOにおいて、そもそもルールがないからだ」という。何も要求しないで関税を上げるだけでは、相手もいかに改善すべきかが分からない。交渉しない限り、関税報復のスパイラルで終わってしまう。

保護主義はぬるま湯

 米国がWTOに期待できないというのであれば、米国が中心になって新国際貿易秩序構築を主導すべきだろう。その際、最も現実的な道は、既存の大型自由貿易協定(FTA)のグローバル化である。

 なぜ環太平洋経済連携協定(TPP)を育てないのか。なぜ米欧FTAの交渉を受けて立たないのか。

 米国には官民一体でもっと大胆な、想像力のある貿易を構想して欲しいものだ。貿易が政治家の人質にされ、関税偏重になっている。

 中国は米国からのデカップリングを通じて、一層強くなるかもしれない。他方、米国は自ら始めた保護主義から脱出できなくなるかもしれない。

 保護主義は快いぬるま湯だ。その間に産業は競争力を失う。それが世界に伝染する。

 バイデンの方に若干の救いがあるとすれば、かかる保護関税の範囲を出来るだけ限定しようとしていることである(選挙を控え消費者も怖い)。他方、トランプは無謀に全ての産品に一律に関税を掛けるというものだ。

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