FDD Action(民主主義防衛財団) のファイファーとCSIS(戦略国際問題研究所)のバーグが、Foreign Policy誌(電子版)に5月7日付で掲載された論説‘Mexico and the United States Need to Talk About China Now’において、メキシコへの中国進出について、米墨間の意思疎通ができておらず、大統領選挙や米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)見直しを通じて二国間関係が衝突コースに突入するリスクがあると論じている。要旨は次の通り。
6年間のロペス・オブラドール政権の間、メキシコにおける中国の政治的・経済的活動は著しく拡大した。他方、米国の中国との地政学上の対立の中、昨年、メキシコは米国の最大の貿易相手国となり、何百万もの雇用やサプライ・チェーンを支えており、メキシコは米国にとって要の国となっている。
しかし、メキシコでの中国の影響力の増大に対してバイデン政権や議会は意味のある対応をしてこなかったし、メキシコ側も、中国を競争すべき相手として米国が超党派で一致していることを理解していない。この二重の失敗は、今年ほぼ同時期に行われる両国の大統領選挙と2026年に予定されるUSMCAの見直しを考えると、二国間関係を衝突コースに乗せる危険性がある。
米国側では中国を「刻々と深刻化する脅威」と見なしている。バイデンは、メキシコ側が移民を武器に政治問題を引き起こすことを懸念し、ロペス・オブラドールを慎重に扱ってきたが、後継者に対しても同じ方針を継続し、貿易、民主主義、安全保障など、米国の重要な利益を脅かす行動に限定して対応するだろう。
一方、トランプの第2期政権は、恐らく1期目の厳しいアプローチを反映したものになるだろうが、中国に対してより攻撃的なアプローチをとることで、貿易と投資に関する緊張が高まる可能性が高い。
米国にとって、この緊張は26年のUSMCAの見直しプロセスという困難な形で顕在化する可能性がある。この協定は26年に見直され、3カ国が再確認しなければ36年に失効する。