このプロセスでは、メキシコにおける中国企業の存在が最重要事項となるだろう。USMCAが更新されなければ、数千億ドル規模の二国間貿易と投資が危機にさらされることになる。トランプは、当選すればメキシコ産の中国車に100%の関税をかけると約束している。
USMCA見直しプロセスは27年以降に及ぶ可能性があり、民間セクターにとっては不確実性が高まり、米国の地政学的目標を達成するツールとしての同協定の魅力も低下する。大統領選挙後、両国はUSMCAの見直しを待つことなく、生産的な二国間関係を維持しつつ、メキシコにおける中国の存在に対処する必要がある。
米国側は、中国の関与が米国の利益を脅かす分野、例えば先端技術や電気通信などについての明確なレッドラインと、それらがより深い経済統合のために不可欠であることをメキシコに伝える必要がある。
議会と次期政権は、USMCAに違反する中国に対する一方的な行動の誘惑を避け、中国問題とメキシコ自身の協定違反の両方に対処する解決策を交渉すべきである。メキシコの次期政権は、米国との深い経済統合の維持を望むならば、米国の国家的・経済的安全保障上の利益に不可欠な一定のレッドラインに適応し、それを受け入れなければならない。
米墨両国には、二国間協力を強化しようという大きな機運があるが、中国問題に積極的に取り組まなければ、その勢いは止まる恐れがある。両国指導者は、ほぼ同時期に行われる選挙によってもたらされる機会を捉え、手遅れになる前に中国をめぐる政治的・経済的危機を回避し両国関係を強固なものにするための効果的な措置を講ずるべきである。
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米大統領選はじめ不確定要素も
この論説は、メキシコにおける中国企業の進出が米墨間の重大な問題となる可能性があり、早期に米墨間で調整を図る必要があり、最悪の場合、新たに選ばれる両国の大統領の対応次第では、両国が衝突し、26年のUSMCA見直しの合意ができず同協定が失効する可能性すら排除できないとして、警鐘を鳴らしている。
解決策としては、この論説の論者は貿易問題を地政学上の問題と位置付け、世界貿易機関(WTO)/関税貿易一般協定(GATT)との整合性を全く考慮せず、米国と深い経済統合を望むのであれば、米国の利益を脅かす分野についてのレッドラインを理解する必要があるとし、単に在メキシコ中国企業の対米輸出の規制だけなく、先端技術やITなどの分野のメキシコへの中国投資の規制も求めているようである。
この問題はUSMCAの26年の期央見直しプロセスの重要問題となる可能性があり、見直しに関する合意が得られなければ36年に同協定は失効することになる。論者は、この問題はUSMCA見直しとは切り離して、早期に中国問題に関する米墨協議を始めるべきであるとし、またUSMCA上問題がありえるメキシコ産中国製品に対する一方的な措置をとることを避け、メキシコ新政権の理解を得る解決策に努力すべきだと主張する。