〈今回の陪審評決の重み〉
・12人の陪審員は、さまざまな職業、年齢、生い立ち、メディア接触、趣味、思想傾向など異なるバックグランドの中から厳選された本当の意味での“国民の代表者”であり、その中にはトランプ氏が所有するメディアである「True Social」のみを普段からニュース源としてきた人物や超保守的TV局として知られる「Fox News」で毎日ニュースをフォローしてきたという共和党支持者の2人も含まれていた。
・陪審員団は去る4月16日、公判開始以来、20日間近くにわたり、検察側、弁護側から選ばれた10人以上の重要証言者たちの陳述をメモを取りながら慎重に聴取してきた。
・最終段階で、検察、弁護団双方がそれまでの証言内容を「総括」として陪審員たちにわかりやすく説明し、双方の主張の正当性をアピールした。
・これを受け、陪審員団は去る29日午前から10時間近くにわたり、協議に着手したが、結論には至らず、担当判事に対し、「最終判断を下す前になお、補強となる追加資料が欲しい」旨、異例の要請を行った。
・30日、審理2日目に入り、同日夕刻になってようやく陪審員団の結論がまとまった。「全員一致で、告発対象の34項目すべての罪状で有罪」という予想外の内容だった。12人の陪審員のうち、たった1人だけでも最後まで異議を唱え続けた場合、結果として『誤審(mistrial)』となり、トランプ氏が無罪放免となる可能性も十分あった。
〈今後の量刑言い渡し〉
・ニューヨーク州刑法によると、刑事事件で有罪となった場合、罪状1項目につき、罰金5000ドル以下または4年以下の刑期が課せられることになっており、トランプ被告の場合、34項目すべての罪状で「有罪」となったことで、理論上、最高で罰金17万ドルまたは合計136年の刑期を負わされる。
・しかし、トランプ被告は「初犯」であり、情状酌量の余地があるとの見方も多く、担当判事はそれより軽い量刑で妥協する可能性がある。
・ただ、トランプ被告は今回の公判中も、法廷内外で何度も判事やその家族を口汚く罵倒する発言を繰り返し、判事から法律に基づき「口封じ命令」が出されるなど、心証を悪くしているだけに予断を許さない。また、担当判事はかねてから『貴賤を問わず万人が法の下で平等な扱いを受ける』との信念を貫いてきた厳格主義者としても知られるだけに、何年かの実刑をトランプ前大統領に言い渡す可能性も否定できない。
・結果的に刑期を免れたとしても、最低でも自宅外での行動が制限される「保護観察処分」となる可能性が高い。