2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2024年6月1日

〈選挙活動の大幅制約〉

・トランプ被告は今回の裁判結果を不服として近く、控訴するとみられるが、今回の裁判は、“国民の代表”としての陪審員裁判であるだけに、結果が覆される可能性は少なく、また、控訴審の結審までには、最低でも1年以上はかかるとみられる。

・控訴しても、何らかの刑が言い渡される7月11日以降、刑に服することを義務付けられるため、自宅外での日常の行動や生活に制限が加えられることになる。

・7月15日からウィスコンシン州ミルウォーキーで開催される全国共和党大会でトランプ氏が同党大統領候補として正式指名されることになっているが、「史上初の重罪犯罪人大統領」としてどのようなかたちで登壇し、指名受諾演説を行うのか不透明な部分が多い。

・その後、投票日までの選挙期間中、各地での遊説や集会出席も制限を余儀なくされる。

〈直近のTV討論会への影響〉

・6月27日には、バイデン、トランプ両候補による最初のTV討論会が行われる。今回の選挙戦開始以来、双方が直接対峙するやりとりとなるだけに、両陣営とも重要イベントととらえ、用意周到な準備にとりかかってきた。

・トランプ氏自身も、「ディベートによって、国民はバイデンの無能ぶりを知ることになる」などと事前に強気のコメントを繰り返してきた。

・しかし、一転「重要犯罪人」の立場でバイデン氏と向き合うことになったことで、司会者から厳しい質問が発せられることは避けられず、数千万人が視聴するとみられるTV画面の前で劣勢に立たされるとみられる。

・一方、バイデン氏は立場上、ディベートの場で、この問題でトランプ氏を深追いすることはせず、内政、外交面でのこれまでの大統領としての実績をアピールすることになるとみられるが、今回の「有罪評決」が下されたことで有利な立場に立ったことは間違いない。

〈今後の選挙資金集めへのダメージ〉

・トランプ氏は「有罪評決」言い渡しの30日当日夜、自ら所有するメディア媒体を通じ、全米の支持者向けに、今後の選挙戦での勝利を期した緊急の政治献金呼びかけを行った。自らにとって極めて不利な評決結果が大々的に全米で報じられたことで、今後の選挙戦で欠かせない有権者からの資金集めに悪影響が及ぶことを警戒したものとみられている。

・しかし、これまでの資金集めレースでは、バイデン氏にかなり差をつけられていることが明らかになっている。バイデン陣営は3月の1カ月間だけでも、大口献金者からの集金額が9000万ドル以上となったことを明らかにするとともに、その後も、ニューヨークの大劇場にクリントン、オバマ両元大統領をゲストに迎えて行われた1回のイベントだけで2600万ドルもの選挙資金を集めている。

・これに対し、遅れ気味だったトランプ陣営も資金集めの態勢巻き返しを図った結果、手元資金が9300万ドルに達したものの、その後は、勢いに陰りがみられると伝えられていた。

・今後、「有罪評決」を逆手に取った“背水の陣”の呼びかけで、一部の熱狂的支持者からある程度の資金集めが期待できる一方、「重罪人」のイメージが各種メディアで全米に伝播することで、11月投票日に向けて次第に資金不足に陥る恐れもある。


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