トランプ前大統領をめぐる不倫口止め料記録改ざん事件の初公判は、たんなる一個人のセックス・スキャンダルにとどまらず、2016年大統領選工作の一環としての不倫隠蔽という重大な疑惑へと焦点が移りつつある。もしこのまま、検察ペースで審理が進み、有罪判決が出た場合、トランプ氏は11月の大統領選に向け、極めて不利な立場に追いやられかねない。
裁判の様相を変えた冒頭陳述
進行中の公判は、トランプ氏が起訴されている4件の刑事訴追事件のうちの第1弾。
ほかに、①20年大統領選結果転覆・教唆、②国家機密文書不正持ち出し・秘匿、③ジョージア州における大統領選開票不正介入――の3件があり、同氏が直面する4件すべての裁判で審理対象となっている違反摘発行為は、91項目にも上っている。
これらのうち、去る4月15日、ニューヨーク州地裁で始まった初公判では、トランプ氏が15~16年にかけて、過去にポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんと関係を持ったとされる事案をめぐり、相手に不倫口止め料13万ドルを支払った際の業務記録不正処理など34項目の違反行為が摘発された。
当初は、トランプ氏を待ち受ける4件の刑事裁判の中では最も軽微なものと見られてきた。米マスコミの反応も公判開始前までは、比較的盛り上がりを欠くものだった。
ところが、ふたを開けてからは、様相が変わってきた。
そのきっかけとなったのは、公判初日のアルビン・ブラッグ連邦検事が読み上げた起訴理由の詳細に触れた冒頭陳述だった。
ブラッグ検事は、被告が関連書類の不正処理をしてまでポルノ女優にもみ消し料を支払った真の目的は、自らが立候補した16年大統領選に向け不利な情報を有権者から隠蔽することにあったとして「これは明らかに『選挙介入行為』に充当する」と強調した。