2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2024年5月20日

 州司法当局の説明によると、同裁判で「有罪」となった場合、たんなる「不倫口止め料支払い」をめぐる個人的不正であれば、州法に基づく「微罪(misdemeaner)」扱いとなり、罰金刑程度で済むが、連邦法に関わる「意図的選挙介入」が告発対象とされた場合は、「重罪(felony)」となり、刑も重いという。

 これを受け、マスコミ側も、公判に対するそれまでの見方の修正を余儀なくされてきた。

 「ニューヨーク・タイムズ紙」も早速、公判開始直後の4月17日付けで「トランプ公判はたんに『もみ消し』がらみなのか?」と題する記事を掲載、「これまで弊紙含め多くのメディアが、『もみ消し裁判(hush-money trial)』の見出しで報じてきたが、実際はさらに深刻な内容を含んでいた」「検察側は、たんなるセックス・スキャンダル以上の重大事件ととらえている」などと“自省”を込め報じた。

 公判を担当するジュアン・マーチャン判事も、公表された「開廷事由」の中で、「16年大統領選に不正に影響を与えたとする検察側の摘発」が審理対象となっていることをすでに確認している。

関係者たちの詳細な証言

 開廷後、1カ月を経過した今回の公判では、検察側の重要証人として、①スキャンダルを売り物とする雑誌「National Enquirer」元発行人デービッド・ペッカー氏、②元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさん、③ダニエルズさんの元弁護士キース・デービッドソン氏、④トランプ政権当時の首席広報官ホープ・ヒックス女史、⑤元大統領顧問弁護士マイケル・コーエン氏らが証言台に立った。

 証言者たちの主な陳述内容は以下のようなものだった:

〈デービッド・ペッカー氏〉

 「トランプ氏の永年の友人として16年の大統領選挙期間中、彼の“目と耳”役として仕事を手伝った。その間、政敵にとって不都合な噂があれば、記事として掲載し、彼にとってダメージとなりそうなネタはできるだけ金銭で口封じするという“キャッチ・アンド・キル”作戦を展開した。このスキームは彼と彼の弁護士マイケル・コーエンしか知らなかった……これらはすべて大統領選挙でトランプを当選させるためであり、彼の指示に基づいていた」

〈ストーミー・ダニエルズさん〉

 「私は去る06年のある日、トランプ氏が所有するレイク・タホ(ネバダ州)の豪華ホテルのスイートルームに誘われ、一夜を共にした。ベッドではさまざまな体位でセックスし、時には彼の求めに応じ、雑誌を丸めて臀部をたたくなどさせられた……コンドーム使用は拒否された。彼は行為の合間に、ポルノ映画業界の興味ある内輪話などをしてくれた……また、ベッドの中で、メラニア夫人のことを話題にしたところ『彼女とはいつも寝室は別だし、気にすることはない』と答えた」

〈キース・デービッドソン氏〉

 「大統領選挙期間中、ダニエルズさんから“興味ある話”を打ち明けられ、National Enquirer誌のディラン・ハワード編集長にネタを売り込んだ。編集長はすぐに上司でトランプ氏の親友であるペッカー発行人に相談したところ、ネタは握り潰し、ダニエルズさんには口止め料を支払うことになったと知らされた……大統領選挙開票が終了し、トランプ氏当選が判明した深夜、すぐにハワード氏にテキスト・メッセージを送り『われわれのやったことが実ったね』と伝えた。『すごいことになった』と打ち返しがあった……結果として、われわれのやったことがトランプ当選の手助けになったことだけは間違いない」

〈ホープ・ヒックス女史〉

 「私はトランプ氏が16年大統領選挙出馬を表明以来、公設秘書およびメディア担当として仕えてきた。同年10月、ワシントン・ポスト紙記者がトランプ氏の猥雑な女性関係の会話記録を入手し、記事化前にコメントを求めてきた。最初はトランプ氏と相談し、『事実無根』で通すつもりだったが、単なる観測記事ではなく、会話テープがあることを確認して否定コメントは出さなかった……18年初めには、ウォールストリート・ジャーナル紙が、ポルノ女優とのスキャンダルもみ消し支払いに関するネタをつかみ、事前に私にコメントを求めてきた。選挙投票日前にもみ消し事件が発覚するとまずいので、同紙オーナーであるルーパート・マードック氏と親交のあるジャレッド・クシュナー氏(トランプ氏の娘婿)に相談した。トランプ氏とも、なんとか選挙前にこの問題を処理する必要があることなどを話し合った。しかし、その後まもなく、記事は掲載された」


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