2024年7月16日(火)

バイデンのアメリカ

2024年5月20日

〈マイケル・コーエン氏〉

 「16年の選挙期間中、ある時、ストーミー・ダニエルズさんとのスキャンダルが浮上してきたことについての対応策をトランプ氏と話し合った際、『メラニア大統領夫人が知ったらどう思いますかね?』とこちらから水を向けたところ、トランプ氏は『気にするな。自分はいつまで奔放な暮らしができると思うかね、そう長くはないんだ(How long do you think I will be on the market? Not long)』などとつぶやいた。

 トランプ当選後の18年、捜査に乗り出した連邦捜査局(FBI)に自宅、オフィスの捜索を受けた際には、大統領執務室から自分に直接電話が入り『心配無用だ。自分は今や大統領だし、ここには何も危ない捜査対象物品はない』などと語った。弁護側は、(トランプ氏のスキャンダルもみ消しは)メラニア夫人に知られたくなかったからと主張しているが、事実は逆だ。

 トランプは初めから彼女のことなど眼中になく、すべては選挙のためだった。16年11月の大統領選を控え不倫が発覚すれば『女性たちを敵に回し、選挙戦で大惨事(disaster)になる』『とにかく口封じをしろ。口封じの金は13万ドルだが、君の弁護士報酬の中から立て替え払っておくように』などと彼から指示された」

 これらの検察側証言に対し、弁護団側は公判開始以前から終始一貫して、もみ消し料支払いは大統領選挙とは無関係であり、メラニア夫人らにプライベートな秘事を知られたくなかったからだと主張してきた。

 しかし、これまでの公判を通じ、ダニエルズさんの証言として、トランプ氏が、「メラニアとはいつも寝室はべつだし、気にするな」と語ったこと、さらに、コーエン氏もトランプ氏が「メラニア夫人のことなんか眼中になかった」「すべては選挙のためだった」などと証言したことは、連邦選挙法に違反する「重大な犯罪行為」だとしてきた検察側の主張をかなり裏付ける結果となったとみられている。 

大統領選挙への影響

 今後、最終的に陪審員による審決で「有罪」が確定した場合、マーチャン判事が「量刑」判断を下すことになるが、かりに「収監」「刑期」が回避され、罰金刑に終わったとしても、公式に大統領経験者としての「史上初の犯罪人」の烙印を押されることになる。それだけに、トランプ氏にとって打撃は計り知れない。

 トランプ陣営にとって最も懸念されるのが、裁判結果が今後、大統領選での女性票動向に及ぼす影響だとされる。

 政治ウェブサイト「The Hill」は、今回の公判での検察側証言により、トランプ氏の赤裸々な女性関係が有権者の前に改めてクローズアップされたとして、以下のような解説記事を掲載した:

 「共和党有力上院議員の間では、公判でのダニエルズ証言などがトランプ候補に対する“警戒信号”になりかねないとの懸念の声が出始めている。去る3月上旬のインディアナ州共和党予備選では、トランプ氏の対抗馬として立候補した女性のニッキー・ヘイリー元国連大使が途中で戦線離脱したにもかかわらず、12万8000票も獲得したこと自体、女性票がトランプ候補の弱点になっていることを裏付けた。

 それに続けて公判でさらに、彼の女性癖が暴露されたことで、今後さらに女性たちのトランプ離れを加速させかねないというものだ。最近の世論調査結果によると、大統領選に向け最初に党員集会が行われるアイオワ州で共和党有権者の20%、最初に予備選が実施予定のニューハンプシャー州で34%、その後のサウスカロライナ州で25%が本選で『トランプに投票しない』と回答している。今後さらにアンチ・トランプ票が増える可能性がある」


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