梨花女子大学のイーズリー教授によれば、中国が日中韓協力に再び関与してきたことは、ルールに基づく地域秩序にとっては良いことだが、中国の意図は、日米との経済安全保障協力、特に半導体サプライチェーンに関する協力の弱体化かもしれない。
韓国国家安全保障問題研究所の中国センター長であるチューは、将来の成功の鍵は、習近平主席が出席するかどうかだと言う。チューは、中国の国家元首の交渉力無しには、この首脳会談は、将来の目標も達成する可能性は低いと言う。
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中国が前向きではなかった理由
中国との関係は日韓両国にとって大変に重要だ。特に地続きの韓国にとって、中国とある程度良好な関係を築くことは、北朝鮮対応という視点だけでなく、韓国自身の安全と繁栄にとって非常に重要である。日本にとっても、中国との競争と共存を維持することは、隣国は変えられないという地政学の現実から考えても、最重要の外交目的である。
そういう観点から、約5年振りに日中韓首脳会談を実現したことの意義は、この解説記事が言うように、「ルールに基づく地域秩序」にとっては大きい。
しかし、今回の日中韓首脳会談が実現したのは、言い換えれば、これまで開催に積極的でなかった中国が開催に応じたのは、日韓関係の改善、日米韓関係の緊密化によるところが大きいのではないだろうか。これは、中国と渡り合うためには、自らの立場を強くすることが一番大事だと言うことを如実に示している。
そもそも、なぜこれまで中国は日中韓サミットの開催に前向きでは無かったのか。それは、米国と話していれば、米国の同盟国でありその行動がある程度予測できる日韓と話す必要は無いという中国なりの割り切りがあったからだろう。
しかし、国際社会の環境は中国にとって厳しくなっている。日米同盟、米韓同盟は益々強化され、楔を容易に打ち込めると思っていた日韓関係も改善し、日米韓協力は新時代に入った。さらには、台湾を取り囲むように、日米比3カ国の安全保障協力も強化され、今年のリムパックには、再度多くの欧州諸国も参加する。
ワシントンで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会談では、通常は北大西洋の問題に焦点が当たるが、太平洋国家でもある米国は、意識的に太平洋側の情勢にも焦点を当てようとするだろう。岸田文雄首相を含むAP4(NATOアジア太平洋パートナー)の首脳も再び出席する。