2024年6月12日、東京都心では今年初めて最高気温が30℃超えの真夏日に。6月中旬以降に初真夏日が観測されるのは11年ぶりで、これから厳しい暑さが続くことが予想される。身体が暑さに慣れていないこの時期は、熱中症のリスクも高まる。暑さを我慢せずエアコンなどで室温を調整することも重要なため、電力の需要も増大するだろう。
発電所では、電気を安定供給するために需要の予測や調達が重要になってくる。気象変動以外にも設備の劣化や技術伝承、世界情勢などさまざまなリスクが突然顕在化することがある。東日本大震災以降、原子力発電所が稼働停止に追い込まれ、代わって重要性が高まっている火力発電所を取材し、2023年7月27日に掲載した『電気は「あって当たり前」安定供給支える現場の苦悩と矜持』を再掲する。
発電所では、電気を安定供給するために需要の予測や調達が重要になってくる。気象変動以外にも設備の劣化や技術伝承、世界情勢などさまざまなリスクが突然顕在化することがある。東日本大震災以降、原子力発電所が稼働停止に追い込まれ、代わって重要性が高まっている火力発電所を取材し、2023年7月27日に掲載した『電気は「あって当たり前」安定供給支える現場の苦悩と矜持』を再掲する。
一目見て莫大な発電量を担う施設であることが理解できた。そこには、高さ200メートルの巨大な煙突が2本そびえ立つ。
2023年6月1日、JR桑名駅から伊勢湾を臨む臨海工業団地の方面に約20分車を走らせ、小誌記者が訪れたのは、国内火力発電最大手・JERAの川越火力発電所(三重県川越町)。目的は電力の安定供給を支える火力発電所で働く人々の思いや苦労を知ることだった。
川越火力の特徴は二つの意味で〝世界最大級〟であることだ。一つは総出力約480万キロワットを誇る世界最大級の液化天然ガス(LNG)火力発電所だということ。東京ドーム27個分に匹敵する124万平方メートルの敷地内には、合計84万立方メートル(㎥)ものLNGを貯蔵できるタンクが全部で6基あるほか、気化設備から発電プラントまで備わっている。もう一つは、世界最大級のLNG船を受け入れ可能な発電所であるということだ。
記者は今回、特別な許可を得て、普段ならメディアが足を踏み入れることができない全長約500メートルものLNG桟橋内に加え、その先の船からLNGを受け入れる最前線のエリア「ワーキングプラットフォーム」に入った。そこには高さ約20メートルのローディングアームと呼ばれる装置が立ち並ぶ。船上の配管と陸上の配管を接続し、発電所内のLNGタンクに貯蔵するのだ。
川越火力では1997年に初めてLNG船を受け入れて以降、23年5月末までに累計1276隻を無事故で受け入れ、LNGの総量は8000万トンにも及ぶ。