2024年11月22日(金)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年6月21日

不快感を除く調整

 どういうことなのだろうか。

「難聴の耳に聞き取りが改善するレベルの音を入れると、静かな環境に慣れてきた『難聴の脳』に最初はとても不快に感じます。特に食器や紙のこすれる高音域の音や、換気線や車のエンジン音など低音域が気になるという声が多いのですが、使用者の訴え通りに高音域と低音域の音量を下げると、聞き取りは悪くなっていきます。そこで、『聞こえない』と言われると、今度は人の話し声が多い『中音域』をアップさせたりする。その結果、中音部だけわずかに聞こえが良くなった補聴器が出来ますが、それは聞こえないよりはマシと言う程度のもので、十分に聞こえが良くなったといえるものではありません。

トレーニングについて詳しくは、新田先生のご著書『難聴・耳鳴りの9割はよくなる』にも書かれている、→「聞こえるプロジェクト」

 実際の生活では、いろんな音の中から会話を『聞き出していく』わけですから、不快に感じる音がある程度聞こえてくることは仕方ありません。環境としていろんな音がある中から必要な音を聞き出せるようにするのが、トレーニングの肝なのです」

 では、どうして間違った調整が行われてしまうかと言うと、「適切な調整のための一定レベルの知識や技能を持ち合わせていない調整者・販売者が存在するからではないか」と新田先生。

 しかしそうなると、補聴器の知識や技術を持つ調整者や販売者たちをどう探せばいいのだろうか?

補聴器相談医とは?

 聞こえについて相談したい場合、まずは耳鼻咽喉科を受診すべきだとこれまでに何度か書いてきたが、補聴器の相談をしたい場合には、「補聴器相談医」を探すとよりいいだろう。
補聴器相談医とは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から委託された「補聴器を用いた医療に関わる医師」のことで、聞こえに不安を感じるようになった人に対して診断と治療を行い、必要に応じて販売店を紹介するだけでなく、補聴器購入後も補聴器の専門家である「認定補聴器技能者」(後述参照)と連携し、経過観察と適切な使い方の指導を行う。

 2024年5月現在、補聴器相談医は全国に約5,300人おり(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会調べ)、その名簿は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のHPで公開されている。
 
補聴器相談医名簿

 また、医療機関の中には「補聴器外来」を設けているところもあるのだが、こちらは名簿として公開されているものがないので、補聴器外来が自宅近くにあるかはご自身で検索するといいだろう。

認定補聴器技能者制度

 続いて、補聴器をどこで買うかという話だが、連載第16回で、日本では補聴器を扱う人に国家資格がいらないと書いた。しかし、民間の「認定補聴器技能者制度」というものが、その代替を担おうとしている。

 公益財団法人テクノエイド協会では、1993年より「認定補聴器技能者」を養成しており、2024年6月現在、全国に4836人の認定補聴器技能者がいる。

 認定補聴器技能者になるためには、4年間の講習期間を経たのちに資格試験に合格する必要があり、一定水準以上の知識と技能を有することが保証されている。補聴器販売従事者に対するこの資格制度は、難聴者への補聴器の適切な供給に役立つことを目的としているだけでなく、補聴器相談医との連携も行っているので(=受験資格に補聴器相談医からの連携証明が必要)、補聴器を買う場合には、認定補聴器技能者を探すといいだろう。
 
 また、認定補聴器技能者が在籍し、補聴器の調整・選定に必要な種々の測定機器や設備について公益財団法人テクノエイド協会の認定審査基準をクリアした店には、「認定補聴器専門店」の資格が与えられている。5年ごとに認定時と同様の厳正な更新審査を受けることが義務付けられており、2024年6月現在、全国に1004店ある。

 認定補聴器技能者と認定補聴器専門店の名簿はテクノエイド協会のHPで公開されているので、お住まいの近くをチェックすることをお勧めする。

 認定補聴器技能者検索

 認定補聴器専門店検索

 最後に、大切な情報を書いておく。

 補聴器相談医を受診して、「補聴器適合に関する診療情報提供書」に記入してもらってから補聴器を購入すると、医療費控除の対象になる。知っておくといいだろう。
(国税庁)補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱いについて

 お金の話が出たところで、次回は助成金について書く。(続く)

注1:「他機関で購入された補聴器の検討~補聴器適合検査の指針(2010)に準じた適合判定~」(Audiology Japan 61, 216~221,2018)上野真史、新田清一、鈴木大介、藤田航、中山梨絵、 鈴木成尚、坂本耕二、草野真理、大石直樹、小川 郁、済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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