2024年6月14日(金)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年6月7日

 前回(『難聴は認知機能の低下を引き起こす?~改善できる危険因子・難聴①』)から、難聴と認知症の関係を見ている。難聴は認知症の大きな危険因子(リスク因子)だが、補聴器を使用することで認知機能の低下を抑制できる可能性があるとわかった。しかし日本では補聴器が普及していないのが現状だと言う。

 そこで、今回は補聴器普及の実際を見ながら、普及を妨げている原因について考える。

補聴器普及率は15%

 まずは、下記のグラフを見ていただこう。

「JapanTrak2022記者発表資料」 写真を拡大

 これは、国内外の補聴器メーカー11社が加盟する一般社団法人・日本補聴器工業会が発表した調査資料で、補聴器の普及率を欧米先進諸国などと比較したものである。

 2022年の調査結果によると、補聴器を必要とすると思われる人たちの中で、実際に補聴器を使用している人の割合「補聴器普及率」は、日本では15%。欧米先進諸外国などと比べて低い数値となっている。

 また、補聴器を買った人たちの満足度を調べた結果でも、諸外国が軒並み7~80%程度なのに対して、50%とこちらも低い。

「JapanTrak2022記者発表資料」 写真を拡大

 ちなみに同じ調査によると、補聴器購入額のボリュームゾーンは、1つ(片耳)10~30万円。両耳では20~60万円になるわけだが、これだけ高額のものを買って、それでも「満足していない人が半数」というのはどういうことなのだろうか。

正しい知識が伝わっていない

 ……と、他人ごとのように書いたけれど、ここでカミングアウトしておくと、実は私も高額補聴器を親に勧めて購入に至らせたにもかかわらず、うまく使えていない現状に心を痛めている一人だ。高いお金を使わせたことを申し訳なく思っているのに加え、うまく使えていないことで親が補聴器を嫌いになり、その結果、認知症に進んだらどうしようという不安を抱えている。

 そんなタイミングで、このたび専門家やメーカー団体などを広く取材したのだが、取材した感想を先に言うと、私たちは補聴器についての「正しい知識」をあまりにも持っていない。そして知らないということは自分に大きな不利益をもたらすということを強く思い知らされている。

 では、私たちが知らない補聴器の「正しい知識」とは――?

 それを知るために、前回に引き続き、慶應大学名誉教授で「オトクリニック東京」院長の小川郁先生に教わりながら、まずは補聴器が普及していない理由から見ていこう。

補聴器が普及しない理由

「日本で補聴器が普及していない理由はいくつかありますが、まずは補聴器に対してのイメージの問題があります(→1)。補聴器を買っても満足できていない人の数が多いことからもわかる通り、『補聴器を使っても聞こえない』『使いづらい』という声は実際多いですし、そうした声が補聴器のイメージを下げている面はあります。

 また、難聴自体、自覚するのが難しいこともあげられるでしょう(→2)。

 しかし何よりも大きいのは、補聴器が何の規制もなく、どこでも買えるということです(→3)。これは、先に上げた補聴器のイメージの問題にも深くかかわっているのですが、専門家から購入していないことが補聴器の使いづらさにつながり、補聴器のイメージを悪くし、結果的に普及を妨げているという連鎖を生み出しているのです。

 関連して、買う側に正しい情報が伝わっていないということもあるでしょう(→4)。また、補聴器が高額であるという費用面の問題もあげられます(→5)」(小川先生、以下同)

【補聴器が普及していない理由】

  1. イメージが良くない
  2. 難聴を自覚するのが難しい
  3. 何の規制もなく、どこでも買える
  4. 正しい情報が伝わっていない
  5. 高額である

補聴器はイメージが悪い?

 一つずつ見ていこう。

 まず、(1)の「補聴器に対してのイメージの問題」とは、小川先生がおっしゃった「使い勝手」の印象の他に、「補聴器は年寄りくさい」「恥ずかしい」というイメージの問題もあるだろう。私が高齢者を親に持つ世代や高齢者自身に行った聞き取り調査では、「補聴器は年寄りくさい(と言って使いたがらない)」「大げさだ」という声が本当に多かった。

 私の母の場合で言うと、耳の調子が悪いと言い出したのは去年の夏だったのだけれど、耳鼻咽喉科を受診して補聴器を勧められるに至っても、「補聴器をするほど歳ではない」「聞こえないわけではない」と使用を固辞し続けた。

 先の「JapanTrak2022調査報告」では、「難聴に気づいてから補聴器を購入するまでに、平均2~3年を要している」という。

 こうしたイメージの問題は、世代的な固定観念もあると思うのですぐに覆すのは難しいかもしれないが、実際の補聴器を見ると、今どきはかなり軽快なスタイルなものが増えているので、「知ること」で、多少はイメージが変えられるかもしれない。

最近の補聴器の主なタイプ「耳あな型」(上写真・左)と「耳かけ型」。小さくて目立ちにくい(画像引用元「日本補聴器工業会ホームページ」)。hochouki.com

 

「テレビなどで頻回に目にする有名な高齢者で補聴器を装用している方がほとんどいないため、なかなか身近な存在になっていないことも原因かもしれません」


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