2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月27日

 以上のように見れば、モディが今回の敗北を選挙戦術の誤算によるものと考える(少なくとも現状維持は出来たと考える)可能性は排除されないように思われる。今回の選挙では国民会議派が主導する野党連合の候補者調整が成功したという側面(ザカリアも指摘している)があったこともある。

 だとすれば、モディは権威主義的な色彩の濃いヒンズー国家主義の政策を今後も強めてその支持基盤の強化を図ろうとするかも知れない。これを転換することはないのではないか。ヒンズー国家主義はモディのアイデンティティそのもののようである。

議会制民主主義は健全化するか

 しかし、そのようなモディの選択は、日本を含む西側諸国が望むところではない。これら諸国はモディが過激なヒンズー国家主義を封印することを欲している。これら諸国が希望するインドは西側と親和性のあるインドである。そのようなインドは、抑圧と封殺とは無縁で宗派色の薄い多様性を貴ぶ温和な民主主義の下で経済の改革と繁栄を目指すインドであろう。

 この先、モディの行動を抑制するものがあるのだろうか。6月9日に発足したモディの内閣は、内務、財務、外務、国防の主要閣僚を留任させる継続性の内閣であるが、BJP単独では議会の過半数を失ったために、30人の閣僚のうち4人を連立を組む政党から起用した。モディはこれまで内閣の存在をほぼ無視し、重要な決定は彼自身が行って来たらしいが、この程度のことが抑制要因となるかは疑問に思われる。

 より重要なことは、議会がその本来の役割を回復し、内政であれ、外交であれ、政権に対する監視機能を発揮できるかにある。国民会議派の議席数は99であるが、野党連合全体では237で与党連合の293に対して数字の上では見劣りしない。

 国民会議派の意気は上がっているようであるが、よくその役割を果たし得るか、その真価を問われるであろう――楽観はできない。

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