モディの下で、インド経済は活況を呈したが、民主的な制度は酷く傷んだ。しかし、今やモディは意気上がる野党、強く抵抗する州政府、政府の権力乱用に挑戦するメディアと市民社会に当面することになる。
投資家と経営者は選挙結果を最も心配している。彼らはモディを経済に実績を有するプロ・ビジネスの首相と見ている。そして、彼らは途上国が繁栄するには強い指導者が必要だと確信している。
しかし、彼は間違っている。途上国世界を最初に抜け出し豊かになったのは日本だった。日本は歴代の無色の首相の下でそれを達成した。
過去60年間で驚異的な成長――この長期に中国すらも上回る成長――を成し遂げた他の二つの経済は韓国と台湾である。そのほとんどの期間、両経済とも穏やかな指導者を持った。
世界の洗練された多くの観察者は、貧しい国を率いる絶対的指導者――彼らは道路を作り迅速に事を成し遂げることが出来る――をしばしば褒めそやす。しかし、インドの平均的な有権者は、長期的には多元主義、協力、多様性がインドの顕著な特質であり永続的な優位性であることを直観的に理解しているように思われる。
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モディはどこまで「負け」だったのか
モディとBJPは予想を完全に覆す大きな敗北を喫した。しかし、それ程負けた訳でもないとも言い得る。
BJPの得票率は19年の前回選挙に比べて37.3%から36.5%に少々下がったに過ぎない。BJPは真に全国的な政党に脱皮するために弱点のインド南部に力を入れたが、事実、その得票率は18%から24%に拡大した。しかし、小選挙区制のゆえに、得票率の拡大は一つの議席獲得にもつながらなかった。
他方、北部はBJPの地盤であるが、前回選挙に比べて55議席を失い、これがこたえた。最も酷かったのは最大の人口を持ち政治的に最重要のウッタル・プラデーシュ州で、19年には80議席のうち62議席(得票率:50%)を獲得したが、今回は33議席(得票率:41%)と振るわなかった。
要するに、BJPが抜きん出て最大の党であることに変わりはない。最大野党の国民会議派は得票率を19.4%から21.1%に伸ばしたが、BJPは国民会議派の議席(99議席)のほぼ倍、得票率は倍以上ということになる。