2024年7月2日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月28日

 一方、ヒズボラの関係者によれば、イスラエル側は継続的に安保理決議に違反してレバノンの領土を侵犯している。戦闘により10万人以上のレバノン人が避難民となり、その多くがヒズボラの財政支援を受けている。

 依然としてヒズボラは、必要に応じ、その部隊をイスラエルとの国境の近くにも遠くにも移動させることが出来る。イスラエルとヒズボラの双方は、お互いの弱点を知っているが、全面戦争になることを避けようとしている。しかし、双方とも「不測の事態に備える」と言っている。

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繰り返されるイスラエルによる挑発

 イスラエルがヒズボラを攻撃するという観測記事が米国で度々報道されている。去年10月、ガザに侵攻する前にイスラエル側が後顧の憂いを断つためにまずヒズボラを攻撃しようとし、米国に止められたとか、今年の3月、イスラエルは6月にヒズボラ掃討作戦を行うとか報じられた。

 最近、イスラエルはガザでの作戦に今年一杯かかるという見通しを出しているが、にもかかわらずネタニヤフ首相が「イスラエルはヒズボラに対して非常に強い行動を取る用意が出来ている」と述べたように、ヒズボラ掃討作戦を行う可能性が高まっている。

 その事情としては、まず、ネタニヤフ首相に対する辞任要求がますます高まる中で、ガザの作戦が思うように進まず、同首相は政権を継続するために危機的状況を続けなければならないだけではなく、ヒズボラの攻撃で6万人の避難民が生じていて国内政治的にもこの様な状況を放置できないということがあろう。

 実際、4月1日にダマスカスのイラン大使館が空爆されヒズボラとの連絡役だった革命防衛隊の准将が暗殺され、さらに、イスラエル側は、今年に入って以来、既に44回もシリア領内のヒズボラ関係施設を空爆していることを考えるとネタニヤフ首相が積極的にヒズボラを挑発して反撃させ、大規模衝突を正当化しようとしているのではないかと考えざるを得ない。


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