2024年7月3日(水)

BBC News

2024年7月1日

フランスで6月30日、国民議会(下院、577議席)選挙の第1回投票が行われ、マリーヌ・ル・ペン氏率いる極右「国民連合」(RN)が33.2%の得票率で、エマニュエル・マクロン大統領の与党連合を抑えて第1勢力となる見通しとなっている。

移民排斥を掲げる「国民連合」の支持者たちは、「マクロン派が一掃された」とルペン氏が述べると歓声をあげた。

得票率の予測では、国民連合がトップで、左派連合の「新人民戦線(NFP)」が28.15%と続き、与党連合は21%で3位にとどまっている。

国民連合の28歳の党首ジョルダン・バルデラ氏は「フランス国民が我々に票をくれるなら、私はフランス国民全員のための首相になることを目指す」と語った。

国民議会選挙の第1回投票で極右が勝利した例は過去に一度もない。それが可能になったという、このシンプルな事実自体が歴史的だと、ベテラン評論家のアラン・デュアメル氏は指摘する。

ルペン氏とバルデラ氏は国民議会の577議席の絶対多数である289議席の獲得を狙っている。

第1回投票で過半数を獲得する候補者がいなかった選挙区では、上位候補者らによる決選投票が7日に実施される。それらも含めた予測では、国民議会は絶対多数に届かない可能性が示唆されている。

そうなれば、過半数議席を握る政党がない「宙づり議会」となり、国民連合は移民や減税、法と秩序に関する計画を推し進めることはできなくなる。

マクロン大統領は国民議会の解散総選挙に踏み切る必要はなかったが、先に行われた欧州議会選挙(定数720)で国民連合が勝利したことを受け、解散総選挙の実施は「最も責任ある解決策」だと述べていた。

投票率は1997年以来の高水準で、3週間という短い期間に行われた選挙戦の極めて重要な性質を映し出している。

パリのレピュブリック広場には、左派を支持する有権者数百人が集まり、国民連合の勝利に対する怒りと衝撃に声を上げた。

マクロン氏は声明で、「第2回投票に向けて、広範で明確な民主共和同盟を結ぶ時が来た」と述べた。

マクロン氏から演説を託されたガブリエル・アタル首相は、「国民連合には一票たりとも投じてはならない」、「目的は明確だ。国民連合が絶対多数を確保するのを阻止する」と語った。

極左「不屈のフランス(LFI)」のジャン=リュック・メランション党首は、「ひとつ確かなのは、アタル氏はもう首相ではいられないだろうということだ」と述べた。ただ、国民連合にこれ以上票を与えるべきではないという点では、アタル氏に同意した。

メランション氏は左派連合「新人民戦線」を構成する左派政党の中で一番の急進左派とされる人物。新人民戦線は第1回投票で国民連合に数ポイント差まで迫った。

極右は「勝利目前」と、過半数獲得の可能性は

国民連合は国内の有権者の3人の1人の支持を確保するに至るまで、長い道のりをたどってきた。

フランスの次期首相となり得るカリスマ的な若い指導者を擁し、学校の教室での携帯電話の使用禁止や、エネルギー税の減税、外国人に対する援助の廃止に至るまで、幅広い政策を掲げている。

パトリックという名の有権者はパリ東部の、国民連合の新たな牙城となり得る地域の一つで、「市民は、街中が安全ではないことを不満に思っている」と語った。

自身が率いてきた共和党を分断させ、国民連合と手を組んだ保守派のエリック・シオッティ氏は、「勝利は目前だ」と語った。

フランスは未知の領域に入り、悪い結果しかもたらされない状況だと、評論家のピエール・ハスキ氏は指摘。「だからこそ、大勢の人がマクロン大統領に怒っている」と、BBCに語った。

今後、国民連合が絶対多数を獲得する可能性はある。しかし現時点では、最も多くの議席を確保するものの「宙づり議会」となる可能性の方が高い。ほかの政党を支持する有権者の後押しを受けて、新人民戦線が得票率をのばす可能性もある。

7日の決選投票では、2政党の戦い、あるいは三つどもえの戦いが繰り広げられるとみられる。

これからは主に地方選挙区レベルで、国民連合の議席獲得を阻止するために3番手の候補が選挙戦から撤退するかどうか、決断が下されるだろう。

ソンム第一選挙区で3番目の得票率を獲得した、マクロン氏率いる中道政党「再生」の候補アルバン・ブランラン氏は、得票率2位のフランソワ・ルフィン氏(不屈のフランス)に勝利するチャンスを与えるため選挙戦から退く意向を示した。同選挙区でトップに立ったのは、国民連合のナタリー・リベイロ・ビレット候補。

「私は政治的ライバルと、この共和国の敵を区別する」と、ブランラン氏は述べた。

「不屈のフランス」のメランション党首は、同党の候補者が3位で、国民連合の候補がリードしていれば、同党の候補者も選挙戦から退くだろうと述べた。

フランソワ・オランド前大統領は、「極右勢力が議会で過半数を獲得しないようにすることが、我々が果たさなければならない義務だ」と述べた。

(英語記事 France's far right celebrates lead and seeks majority

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c9e9r3ggrrxo


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