2024年7月4日(木)

BBC News

2024年7月2日

ヘンリー・ゼフマン主任政治担当編集委員

総選挙の運動期間はいよいよ3日で終わり、4日にはイギリスの政治家らの運命は、有権者の手に委ねられる。

この時期、選挙運動は急に広がりはせず、むしろ狭まる。各政党、特に保守党と労働党の二大政党は、勝利に必要で、重要な有権者にアピールできると期待する、核心的なメッセージに焦点を絞るからだ。

保守党のリシ・スーナク首相や、労働党のサー・キア・スターマー党首がきょう言ったことは、恐らく明日もあさっても聞けるだろう。今はバリエーションを増やすのではなく、繰り返しが重要な時期だ。

では、そのメッセージとは何なのか? スーナク氏は、今週末に首相の座に返り咲くことができると信じている。少なくとも、BBCのローラ・クンスバーグ司会者の1日のインタビューで、彼はそう語った。

しかし保守党陣営は、選挙戦が終盤に差し掛かった今、明らかに守りの姿勢に終始している。

40日前、スーナク首相が雨の降るダウニング街10番地の首相官邸前でこの総選挙を発表した際には、彼が選挙運動の最後の3日間に、サー・キアが「野放し」の権力を振るうようになるとして、労働党の圧勝を警告することになるとは想像もできなかった。

公の場で何を言おうとも、保守党が今週取り組んでいるやり方からは、同党が少なくとも、悲惨な世論調査の結果に妥当性があると考えていることがわかる。

スーナク氏は、1日にミッドランズで選挙運動をした際、ナイジェル・ファラージ氏が何を主張しようとも、同氏が率いる新党「リフォームUK」が真の野党になることは期待できないと警告した。「労働党に対抗するだけの票を獲得できない」からだ。

「想像してみてほしい。何百人もの労働党議員が、たった1人、2人、3人、4人、5人の当選したリフォームUK議員に反対されるのを」

この議論が、何百人もの労働党議員がいることを前提としていることに注目してほしい。

この前提は、保守党が現在直面している、複雑で多方向からの戦いを物語っている。労働党に向かう有権者を引き留めようとする一方で、リフォームUKに傾く元保守党支持者を抑えておくために別の議論を展開し、さらに他の地域では、野党・自由民主党に向かう有権者を止めなければならない。

リフォームUKでここ数日起きている候補者論争や、ファラージ氏がウクライナ戦争は「西側が挑発した」と主張したことは、少なくとも保守党に、選挙戦序盤に苦労しても見つけられなかったものをもたらした。つまり、リフォームUKを攻撃する方法だ。

保守党の候補者の中には、もっと早くそうなってほしかったと思っている者もいる。

保守党ではこうした会話が、投票日まであと3日という段階で交わされている。そして、内々の会話や、半ば公の場での会話では、「次に何が起こるのか?」という、もう一つの話題が出ている。

英紙デイリー・テレグラフは1日、閣僚経験者で再選を狙っているジェス・ノーマン氏の、813語にわたる寄稿を掲載した。

ノーマン氏は最初の行から、総選挙で労働党に敗北を認めたような発言をしているが、記事の中心は、その後に行われると思われる保守党の党首選挙だ。

ノーマン氏は、保守党の党員の役割を縮小する可能性を示し、党首選を急ぐべきではないと述べている。

保守党議員の中には、党首選のプロセスよりも候補者に注目している者もいる。ただしその問題は、7月5日に議員として生き残っている人たちが語るべきものだろう。

労働党の状況は?

ある意味、労働党がすべきことはより明確だ。少なくともイングランドでは、かつての保守党支持者の票を獲得することのみに焦点を絞って戦っている。 ただし、一部の労働党議席、特にサウスヨークシャーをめぐっては、リフォームUKが勢力を伸ばす可能性があるという非常に静かな不安もみられる。

労働党はこの選挙活動で、「変革」という一言をメッセージの中心に据えた。それを最後まで貫いたことに、労働党陣営は安堵(あんど)し、満足している。

だが選挙の最終盤では、変化を望むのであれば「そのために投票しなければならない」と有権者に警告するため、このメッセージも修正されている。

これは、労働党に投票する可能性がある有権者たちが、すでに結果は固まっているとして自宅にとどまったり、別の政党に投票したりするかもしれないという懸念を裏付けるものだ。

それでも、労働党の全体的なアプローチは強気だ。その証拠に、サー・キアは1日、ハートフォードシャー州ヒッチンで選挙運動を開始した。この地域では、スーナク氏が生まれた年の6年前からずっと、労働党議員が一度も当選していない。

労働党内部でも、半ば公式、半ば私的な会話が交わされている。表向きには、ジョン・アッシュワース議員が述べたように、保守党が総選挙で勝利を収める可能性があるとしている。

その半面、労働党内部では、政権樹立の準備についての話題で持ちきりだ。

サー・キアは昨年、長年公務員として働いていたスー・グレイ氏を労働党に引き抜き、物議をかもした。同党は14年間、野党にとどまっていたため、議員や党幹部のほとんどに閣僚経験がない。これが、サー・キアがグレイ氏を雇った主な理由だ。

興味深いことに、労働党が勝利した場合、グレイ氏に加え、党の選挙活動を指揮したモーガン・マクスウィーニー氏も首相官邸に加わる可能性が高い。

その場合、労働党政権は、政府の帳簿で発覚した事態が予想以上に深刻だと、早々に主張する可能性がある。この主張については、英財政研究所(IFS)が先手を打って疑問を呈している。

労働党の戦略家たちは、2010年に首相に就任したデイビッド・キャメロン卿が、2015年の保守党の選挙勝利を確実なものにするの大いに貢献したと考えている。キャメロン卿は首相就任後、職権を利用して労働党の実績を集中攻撃した。今回も同じことが繰り返されるだろう。

もちろん、労働党は勝利しないかもしれない。現時点では、まだ郵便投票しか行われていない。

しかし、この最終局面での二大政党の選挙運動を見れば、両党とも、これが最も実現しそうなシナリオだと考えていることは間違いない。

(英語記事 Parties hammer home key messages as polling day nears

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cw5y33ezz43o


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