2024年7月5日(金)

BBC News

2024年7月3日

アメリカのドナルド・トランプ前大統領が、不倫相手への「口止め料」の支払いをめぐって業務記録に虚偽記載をしたとして有罪評決を受けた事件で、ニューヨーク州地裁の陪審団は2日、量刑言い渡しを当初の7月11日から9月18日に延期した。前日に、米連邦最高裁判所がトランプ前大統領ら歴代大統領について、刑事責任が部分的に免責されるとの判断を示したことを受け、前大統領の弁護団は有罪評決の無効を求めている。

最高裁は1日、大統領在任中の「公的な行為」に関しては免責されるが、「公的ではない行為」に関しては免責されないとの判断を示した。

トランプ前大統領の弁護団はこれを受け、「口止め料」の支払いをめぐる業務記録の虚偽記載事件での有罪評決を無効とするよう求めた。

フアン・メルシャン判事は2日、9月6日までにこの申し立てについて決定すると述べた。

そして、量刑言い渡しが必要な場合は9月18日に行うとした。

ニューヨーク州地裁の陪審団は5月30日、トランプ氏に対し、計34件の業務記録の虚偽記載の罪で有罪とする評決を出した。アメリカの大統領経験者が刑事裁判で有罪とされたのは初めてだった。

検察によると、トランプ前大統領は2016年大統領選の前に、自分の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏に口止め料の立て替え分を支払い、それを弁護士費用として処理するなどした。

4件の刑事事件で起訴されている前大統領は4月、この虚偽記載をめぐる裁判で初めて、刑事被告人となって出廷した。

「完全な無罪放免」とトランプ前大統領

トランプ前大統領は量刑の言い渡し延期について、「完全な無罪放免だ!」(太字は原文ですべて大文字で強調されている)、「自分に対する魔女狩り」を「終わらせるものだ」と、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

しかし、言い渡し延期は、判事が前大統領側の申し立てについて判断を下すまでの、裁判手続きの一時停止にすぎない、

大統領経験者の「公的な行為」への免責を求める申し立ては、2020年大統領選挙の結果を覆そうとしたとして起訴されているトランプ前大統領の裁判にからんで弁護団が行ったものだが、前大統領のほかの法廷闘争にもその影響が波及する可能性がある。

前大統領の弁護団は5月の有罪評決を覆そうと、1日の最高裁の判断を利用しようとした。

弁護団は事件の核心となる出来事や証拠のいくつかはトランプ前大統領の在任中に起きたもので、最高裁の判断に直結すると主張した。

トランプ前大統領を起訴したマンハッタン地検は、前大統領側の主張は「利点のないもの」だと反応したが、7月24日を回答の提出期限とするよう求めた。

「口止め料」訴訟での「免責」は

しかし法律の専門家たちは、今回の弁護団側の申し立ては、前大統領にとって苦しい戦いになり得ると指摘する。

「トランプ前大統領が有罪評決を受けたニューヨークの虚偽記載事件での容疑は、明らかに前大統領の公的ではない行為に関するもので、公務に関わるものは一つもないようだ」と、ニューヨーク拠点のマーク・ザウダラー弁護士は述べた。

「トランプ前大統領はいくつかの訴訟で免責を主張できるだろうが、ニューヨークでの裁判でこの主張を通すのは一番難しいだろう」

検察側は、トランプ前大統領が性的関係を持ったとされる元ポルノ・スターのストーミー・ダニエルズ氏に対し、前大統領の指示で顧問弁護士のコーエン氏から、2016年米大統領選の直前に13万ドルが口止め料として支払われていたことを証明している。

この支払いはトランプ前大統領がまだ大統領候補だった時に行われた。

これが大統領の「公的な」行為にあたると裁判所を説得するのは難しいと、コロンビア大学のフィリップ・ボビット教授(連邦法、憲法学)は言う。「かなりあり得ないと思う」と、教授はBBCに語った

(英語記事 Trump sentencing in hush-money case delayed until September

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cmm2lrd20v1o


新着記事

»もっと見る