2024年7月8日(月)

BBC News

2024年7月5日

アメリカで11月に行われる大統領選に向けた1回目のテレビ討論会で口ごもるなどして精彩を欠いたジョー・バイデン大統領は、今週末にかけて、テレビ局のインタビューや集会への参加を予定している。選挙戦にとって極めて重要な数日間となるが、バイデン氏は撤退を求める民主党の主要献金者らからの圧力に直面している。

バイデン氏は6月27日に行われたドナルド・トランプ前大統領(共和党)とのテレビ討論会で、声がかすれ、時に口ごもり、返答に窮しているようにみえる場面もあった。そのため、同氏の大統領としての適性や、大統領選で勝利する能力について、身内の民主党員からも懸念の声が上がった。

さらに、民主党への献金者らも、候補者をバイデン氏から別の人に替えなければ資金提供を保留すると公然と警告している。

こうした献金者には、ディズニー家の財産相続人アビゲイル・ディズニー氏や、ハリウッドのプロデューサー、デイモン・リンデロフ氏、ハリウッドのエージェントであるアリ・エマニュエル氏、慈善家で起業家のギデオン・スタイン氏らが含まれる。

当のバイデン氏は、今週末にかけて、民主党候補としての立場を強めることを狙っている。5日のゴールデンタイムのテレビインタビューにめずらしく応じ、ウィスコンシン州で集会を予定している。

バイデン氏は4日、討論会で「失敗した」と認めたものの、民主党の先頭に立ってトランプ前大統領に挑むことはやめないと誓った。

「私はどこにも行かない」と、7月4日のアメリカ独立記念日を祝うホワイトハウスでの集まりでバイデン氏は語った。

バイデン氏の撤退なければ献金停止も

主要献金者のディズニー氏は、米ビジネスニュース・チャンネル「CNBC」に対し、11月にバイデン大統領がトランプ前大統領に勝てるとは思っていないと語った。

バイデン氏への支持を取り下げる意向を示したことについて、ディズニー氏は「敬意の欠如ではなく現実主義」に根ざしたものだとした。

「バイデン氏は善良な人物で、国のために立派に尽くしてきた。しかし、この賭けはあまりにも危険すぎる」と、長年にわたり多数の民主党議員や同党の大義を支持してきたディズニー氏は述べた。

「バイデン氏が撤退しなければ、民主党は負けるだろう。確実にそうなると私は考えている。敗北がもたらす影響は実に悲惨なものになるだろう」

別の大口献金者のスタイン氏は、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、バイデン氏が身を引かない限り、自分の家族は大統領選で活動している非営利団体や政治団体への350万ドル(約5億6000万円)の献金を保留すると述べた。

今回の選挙で民主党に10万ドル以上を献金しているデイモン・リンデロフ氏は、「デンバーゴ」(DEMbargo、「民主党」と「一時的差し止め」を組み合わせた造語)という表現を使って、資金提供を保留するよう、ほかの献金者に促した。

「彼らが資金を求めるテキストメッセージを送ってきたら、民主党候補を変えない限り自分たちは1ペニーも出さないし、その考えを変えないと返信してほしい」と、米誌デッドラインに投稿した。

バラク・オバマ元大統領の首席補佐官を務めたラーム・エマニュエル氏の弟でもあるアリ・エマニュエル氏は、コロラド州での会議で、バイデン氏を確実に選挙戦から退かせる鍵は資金提供を保留することだと述べたと、英紙フィナンシャル・タイムズは4日に報じた。

同紙によると、アリ・エマニュエル氏は「選挙活動の生命線は資金だ。唯一の方法はおそらく(中略)資金を枯渇させることだ」と述べた。

「今後数週間で資金が入ってくるかどうかがわかるだろう。(中略)私は大勢の大口献金者と話をしたが、彼らはすべての資金を議会と上院へと移している」

主要献金者が全員、資金提供を打ち切ると警告しているわけではない。しかし、バイデン氏に選挙戦から撤退するよう公に圧力をかけている献金者もいる。

米動画ストリーミング配信大手ネットフリックスの共同創業者で、民主党の最大の献金者の1人であるリード・ヘイスティングス氏は、「精力的な民主党の候補者がトランプ前大統領を打ち負かし、我々の安全と繁栄を守るために」バイデン大統領は「身を引く必要がある」と米メディアに語った。

一方で、バイデン氏が離脱した場合、後任をめぐり、悲惨で混沌(こんとん)とした争いが繰り広げられるのではないかと懸念する声もある。

1988年から民主党のための資金集めイベントを開催してきた、マサチューセッツ州を拠点とするインド系アメリカ人実業家ラメシュ・カプール氏は今週初め、「彼がバトンを渡す時が来たと思う」とBBCに語った。「彼に意欲があるのはわかるが、自然の摂理には逆らえない」。

「私が知っている限り、彼は国のためになる決断を下すだろう」と、カプール氏は付け加えた。

新たな候補者を立てても、その人物には選挙戦に参加するのに十分な時間が残されていないとの懸念から、バイデン氏が選挙戦にとどまるのであれば同氏を支持することに決めた人たちもいる。

ある大口献金者は今週、名前を伏せてBBCの取材に応じた。この人物は、バイデン氏のための資金集めイベントを今月下旬にヴァージニア州で行う計画を進めるつもりだという。

「我々はドナルド・トランプ前大統領をホワイトハウスから排除し続けたいと思っている。そういう考えがおそらく、我々をひとつにまとめている」

バイデン氏の選挙陣営は、討論会当日からその週末にかけて、主に小口献金で3800万ドル(約61億400万円)が集まり、6月だけで総額1億2700万ドル(約204億円)を確保したとしている。

バイデン氏とその陣営は、討論会で厳しい状況だったことは認めつつ、選挙戦に耐えられるスタミナがあることを国民に示す用意があるとしている。

5日に予定されている討論会後初のテレビインタビューでは、バイデン氏の年齢や認知機能などへの懸念を払拭したい考えだ。

バイデン氏はウィスコンシン州マディソンにも出向き、トニー・エヴァース知事(民主党)と選挙運動を展開する予定。

ただ、複数の世論調査では、討論会後にトランプ前大統領との支持率の差が広がっていることが示されている。

米紙ニューヨーク・タイムズが3日に公表した世論調査では、トランプ前大統領が6ポイント差というこれまでで最大のリードを保っていることが示された。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースが公表した別の世論調査では、複数の激戦州でトランプ前大統領が3ポイントリードと、トランプ氏に支持がわずかにシフトしていることが示された。

取材協力:ブラジェシュ・ウパディヤイ

(英語記事 Biden faces donor pressure as he digs in on re-election bid

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cw5ye9295reo


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