イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4日、パレスチナ自治区ガザ地区で拘束されている人質の解放についてイスラム組織ハマスと協議する代表団の派遣を決定した。
アメリカのジョー・バイデン大統領はこの進展を歓迎した。イスラエルとハマスの人質解放に向けた直接協議は、5月上旬にエジプト・カイロで行われて以降、実現していない。
ハマスは前日3日に、バイデン氏が5月末に提示したガザでの停戦計画に回答していた。
回答の詳細は公表されていないが、バイデン氏が停戦計画を提示した段階で、ハマスはすでにガザでの完全な停戦は要求していなかったと、パレスチナの当局者はBBCに話した。
ハマスが「かなり重要な調整」に同意
米政府高官はハマスが「かなり重要な調整」に同意したと述べた。
ただ、「我々は重大な行き詰まりを打開した」としつつ、「だからといって、この取引が数日中に完了するという意味ではない」と強調した。
バイデン氏とネタニヤフ氏は4日に電話会談を行った。人質解放と停戦をめぐる交渉に関する話が中心だったと、この政府高官は述べた。
ハマスの政治指導部は3日、合意を目指して協議してきた複数の案について、エジプトとカタールの仲介者に連絡を取ったことを明かした。
ハマスはこれまで、ガザでの戦闘終結とイスラエル軍の完全撤退を要求してきた。イスラエルはハマスを排除するまでは一時的な停戦しか受け入れないとしている。
バイデン氏が5月末に発表した新たな停戦案は3段階からなる。第1段階で6週間の停戦と、イスラエル人の人質の一部（女性、高齢者、病人や負傷者を含む）の解放、パレスチナ人の囚人の一部を釈放をする。イスラエル軍が「ガザのすべての人口密集地域から」撤退し、人道支援を「急増」させることも含まれる。
第2段階では、「恒久的な敵対行為の停止」の一環として、ハマスが残りの人質を解放し、イスラエル軍はガザから全面撤退する。ただ、撤退は交渉の対象となる。
第3段階では死亡した人質の遺体が返還され、ガザの大規模復興計画が開始される。
イスラエル交渉団の派遣決定、ハマスの要求は
4日の電話会談後、イスラエル政府は声明を発表し、「ネタニヤフ首相はバイデン大統領に対し、人質解放交渉を継続するために代表団派遣を決定したと伝えた。そして、イスラエルが取り組んでいる原則、特に、すべての目標が達成された時にのみ戦闘を終結するという取り組みを繰り返し伝えた」と説明した。
ネタニヤフ氏はガザ地区に残る人質全員の帰還と、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにすることを目標に掲げている。
ホワイトハウスはバイデン氏が、「この取引を成立させるためにアメリカやカタール、エジプトの仲介者と取り組む権限を、ネタニヤフ首相が交渉担当者に与えたことを歓迎する」と述べた。
こうした中、イスラエル交渉団の関係者はロイター通信に対し、ハマスの回答には非常に重要な打開策」が含まれており、「実際に実行される可能性のある取引」があったと語った。
パレスチナ自治政府の高官は4日、ハマスは完全な停戦を要求することを諦めていると、BBCに話していた。ハマス側の新しい条件は、ガザとエジプトの境界のガザ側にある緩衝地帯「フィラデルフィア回廊」と、ガザとエジプトを結ぶラファ検問所からのイスラエル軍の撤退に関するものだという。
この情報筋は、ハマスが仲介者に提示した回答について報告を受けたと言い、前向きな雰囲気があると付け加えた。「我々は間もなく、交渉の新段階に入る」。
アメリカは、ハマスが停戦への進展を妨げていると非難してきた。
アントニー・ブリンケン米国務長官は1日、ハマスは停戦案に対する国際的支持から「唯一逸脱」していると指摘。「イスラエルを含むすべての関係者がイエスと言った提案に、ハマスがイエスと言わなかったことで（中略）隔たりが生じた」とした。
ネタニヤフ氏は「バイデン大統領が歓迎したイスラエル側の提案に取り組んでいる」としたが、ネタニヤフ氏は公にはその要旨をそのまま支持しているわけではない。
ハマスは昨年10月7日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛け、約1200人を殺害し、251人を人質に取った。これを受け、イスラエルはガザで報復作戦を開始した。
イスラエル軍の攻撃でガザではこれまでに少なくとも3万8010人のパレスチナ人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健省は発表している。
ハマスと、同盟関係にある武装集団は今も116人の人質を拘束しているとみられる。このうち少なくとも42人はすでに死亡したと、イスラエル当局は推定している。
ほかの人質はすでに解放・救出されるか、遺体が収容されている。
追加取材：ラシュディ・アブアルーフ（トルコ・イスタンブール）
（英語記事 Israel tells Gaza ceasefire negotiators to resume work）
