2024年7月3日(水)

BBC News

2024年7月1日

ロンドンで6月29日、性的マイノリティー(LGBTQ)の誇りを掲げる「プライド・パレード」が行われた。参加者らはハイド・パークからトラファルガー広場まで、ロンドン中心部を行進。沿道では大勢の人が声援を送った。

このパレードは、NPO「プライド・イン・ロンドン」が主催するもので、今年は500以上の団体や企業が参加。3万2000人以上が行進した。

パレードの先頭には、ロンドンのサディク・カーン市長が、妻のサアディヤ・カーン氏と共に並んだ。

カーン市長は、「ロンドンに住む多様なLGBTQI+コミュニティーとアライ(ally、理解・支援者)が、世界的に有名なプライドの祝祭と連帯の行進のために、再びロンドンの中心地に集まったことをうれしく思う」と述べた。

パレードでは、巨大な虹色の旗(レインボー・フラッグ、プライド・フラッグ)が広げられ、虹色の羽のクジャクなど、さまざまなテーマで飾られたフロート(山車)も登場した。

カラフルで珍しいフロートの中には、LGBTQIA+のバスケットボールクラブ「ロンドン・ナイツ」が運転する移動式ミニバスケットボールコートがあった。

メンバーのウィルソンさんはBBCロンドンの取材に対し、同クラブがプライドパレードに参加することは、人々の「意識を高める」上で重要だと説明。同性愛嫌悪やミソジニー(女性嫌悪)の問題を抱える分野で、自分たちの存在を示すことでもあると語った。

「誰もが好きなスポーツを、安全かつ快適に、歓迎される環境でプレーできるべきだ」と、ウィルソンさんは話した。

「私たちはただ、他の人と同じように、楽しむためにここにいるということを人々に知ってほしい」

また、レズビアンのバイク・クラブ「サフィック・ライダーズ」も参加。小型バイクとクルーザーバイクで隊列を組んでいた。

会員のパンパーさんは、毎年プライドに参加するのは「知名度の向上」と多様性の受容のためだと述べた。さらに「私たちはロンドンだ。私たちはイギリスで生まれ育った。プライドの一員であることを誇りに思う」と話した。

「みんな幸せで、ここにいるだけで喜びに満ちている」

今回が初めての参加という人もいた。ベッキーさんはBBCロンドンに、「私はいつも他の人を応援していたが、自分自身は参加したことがなかった」と話した。

「私は多様性を示すため、私たちが少数派ではないことを示すために行進している」

「友情や、ありのままの自分を受け入れてくれる人々、そして楽しいパーティーを楽しみにしている」

イスラエルの「ピンクウォッシング」に抗議の声も

パレスチナ自治区を支援する「クィアズ・フォー・パレスタイン」もパレードに参加し、「ジェノサイドにプライドはない」と叫んだ。

50人からなるこのグループは、イスラエルがジェノサイド(集団虐殺)を行っていると批判し、「ピンクウォッシング」を非難するポスターを掲げた。

ピンクウォッシングとは、性的少数者の権利を支持しているように装いながら、実際には貢献せず、その立場だけを利用することを指す。イスラエルは、イスラム組織ハマスとの戦争のなか、国際的な評価を高めるために、性的少数者の権利で進歩的な立場を取っているようにみせていると、一部から批判されている。

BBCはこれについて、イスラエル大使館にコメントを求めている。

匿名を希望したある女性は、なぜこのグループに参加したのかという質問に、「パレスチナに自由を」と答えた。

同じく参加者のアルマン・カーンさんは大きな旗を振りながら、ピンクウォッシュに反対していると語った。

一方、同団体がパレスチナ社会でLGBTQの権利が限られている事実を無視している、という批判についてどう思うかと尋ねると、「私はパレスチナ出身ではないので何も言えないが、その質問ができるのは特権のある立場だからだ」と答えた。

その上で、同団体はプライドに参加した人々から前向きな反応をもらっていると述べた。

タヒル・ケサイさんは「この場所にいることが重要だと思い、行進することにした。参加せずにはいられないほど、私たちはこの大義に熱意を注いでいる」と語った。

ユダヤ人団体は参加見送る

パレードに先駆けて英紙サンデー・テレグラフは、ユダヤ人団体「ケシェトUK」と「ウエスト・ロンドン・シナゴーグ」からのパレード参加者が、ルート上で嫌がらせを受けるのではないかと懸念し、パレードへの参加を取りやめたと報じた。

BBCは、両団体にコメントを求めている。

パレードを主催するプライド・イン・ロンドンは、「ケシェトUKとウエスト・ロンドン・シナゴーグが、今年のプライド・イン・ロンドン・パレードに参加しなかったことは非常に残念だ」と述べた。

「両団体やパレードに参加するすべての人々が、広範な安全対策によって可能な限り安全に感じられるように努めてきた。誰もが自分自身のリスク評価を行い、自分にとってふさわしい方法でプライドを祝うべきだと理解している」

プライド・イン・ロンドンはまた、このパレードが、ロンドンのLGBTQ+コミュニティーのすべての人にとって居心地の良いコミュニティーとなることを目指していると述べた。

正午にハイド・パークから始まったパレードは、トラファルガー広場まで行進。広場ではライブミュージックや演説、さまざまなパフォーマンスが披露された。

このほか、ソーホースクエアやレスタースクエア、ヴィクトリア・エンバンクメント・ガーデンズなど、ロンドン各地で「プライド」を祝うイベントが開催された。

一方、ロンドン警視庁はこの日、ウェストミンスターで、公共の迷惑行為を企てた容疑で33人を逮捕したと発表した。

同庁報道官は、数百人の警官が「この週末、ロンドンの中心部でパレードに参加する人々の安全を守るために警備にあたる」と説明。さらに、75人の警官とスタッフが「警察の事前承認を得てパレードに参加する」と述べた。

パレードに先立っては、ロンドン交通局(TfL)が、地下鉄の運行への影響や、駅の閉鎖について警告していた。

(追加取材:PA通信)

(英語記事 Thousands cheer on annual Pride parade in London

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c9r37xvd615o


新着記事

»もっと見る