2024年7月5日(金)

BBC News

2024年7月3日

先週の米大統領選討論会で精彩を欠いたジョー・バイデン米大統領の姿は、民主党全体に衝撃を与え、大統領が民主党候補の指名を辞退した場合、その座を誰が引き継ぐのかという疑問が浮上した。

そうなる可能性は低いものの、もしもそうなった場合には民主党の今後の選挙活動は大いに混乱し、有権者が投票するわずか数カ月前に、醜い党内争いが起きる可能性がある。

しかし、バイデン氏の立候補の行方について、民主党内にパニックと混乱が生じているのは明らかだ。11月にドナルド・トランプ前大統領と対決する候補者として、81歳の大統領で適切なのか、議論が始まっている。

バイデン氏の党指名獲得を支持する、あるいは反対するという議論の中で、トランプ前大統領を破ることがいかに重要かを多くの民主党員が指摘した。

大統領候補が交代する方法はいくつかあるが、選挙まで4カ月あまりという状況で、バイデン氏が撤退する可能性は低い。

だが、もしバイデン氏が降りるとなれば、その後任となる可能性のある人物が何人かいる。

カマラ・ハリス副大統領

すでに次期副大統領の候補指名を得る見通しになっているカマラ・ハリス副大統領は、バイデン氏の後任として当然の選択肢だ。

ハリス氏は副大統領として、米最高裁判所が「ロー対ウェイド」判決を破棄した後、生殖権保護の運動において政権の顔となった。

ハリス氏は大統領を忠実に支え、討論会での大統領の様子も熱烈に擁護した。ハリス氏は、討論会でのバイデン氏について「出足はゆっくりだった」と認めながらも、前大統領よりも中身のある回答をしたと主張した。

ハリス氏は6月27日の夜、CNNの取材で、「見た目についていろいろな意見があるとしても、この選挙と、誰がアメリカ合衆国大統領なのかは、最終的には、中身の問題でなくてはならない」と述べた。

ハリス氏は副大統領という立場上、知名度は高いが、就任から今にいたるまで一貫して、支持率は低迷している。

米ABCニュースが提供する世論調査「ファイブサーティエイト(538)」が追跡調査した世論調査の平均によると、6月24日の時点でハリス副大統領への不支持率は49.4%で、支持率は39.4%だった。

ハリス氏はまた、トランプ氏が副大統領候補に指名した人物と対決する場面で、大統領候補の有力者たちを一気に追い抜くようなゴールデンタイムの瞬間を迎えることになるだろう。BBCがアメリカで提携するCBSは、8月の民主党全国大会前に、副大統領候補者の討論会を主催する予定だ。

グレッチェン・ウィトマー・ミシガン州知事

ミシガン州で知事を2期務めるグレッチェン・ウィトマー氏は、中西部で人気が高まっている民主党政治家で、2028年大統領選への出馬が広く予想されている。

ウィトマー知事は、過去にバイデン氏の選挙応援にも参加しており、政治的野心を隠そうとしていない。

6月22日付の米紙ニューヨーク・タイムズ記事でウィトマー氏は、2028年にはX世代(1965年から1970年代に生まれた世代)の大統領が誕生することを期待していると述べたものの、それはつまり自分だという意思表示には至らなかった。

2022年の中間選挙では、自分の知事再選のほか、州議会での民主党勝利を確保する選挙戦をミシガン州で展開した。

知事職と州議会を民主党が掌握したことで、同州では人工妊娠中絶の権利保護や銃規制措置の成立など、多くの進歩的政策の実施が可能になった。

ギャヴィン・ニューソム・カリフォルニア州知事

カリフォルニア州知事のギャヴィン・ニューサム氏は、バイデン政権の最も強力に代弁する一人だ。ニューサム氏は頻繁にケーブルニュースの番組に出演し、バイデン氏を称賛している。

しかしニューサム氏にも、自身の政治的な野心がある。

2028年の大統領候補としてしばしば名前が挙がるが、バイデン大統領の交代要員としてニューサム知事に期待する民主党の消息筋は大勢いる。

ニューサム氏は近年、保守系メディアに出演しては民主党の主張をアピールする役割や、昨年のロン・デサンティス・フロリダ州知事との討論会を通じて、全国的な知名度を高めてきた。

ピート・ブティジェッジ運輸長官

ピート・ブティジェッジ運輸長官が大統領を目指しているのは、周知の事実だ。

ブティジェッジ氏は2020年大統領選に出馬。その後は、バイデン政権の高官として、特にコミュニケーション能力に優れた一人として、しばしば称賛されている。

ブティジェッジ氏は運輸長官として、国民にとっての危機的事態にいくつか対応してきた。

2022年に発生したイースト・パレスティーンでの鉄道脱線事故や、メリーランド州ボルティモアでの橋崩落事故、米サウスウエスト航空のスケジュール危機などで、連邦政府の対応を指揮した。

ジョシュ・シャピロ・ペンシルヴェニア州知事

ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロ氏は、2022年に当選して以来、高い支持率を維持している。同州は2020年大統領選ではバイデン氏が勝ったが、2016年にトランプ氏が僅差で勝利した激戦区でもある。

2017年から2023年までは州司法長官だったシャピロ知事は、党派の垣根を越えて活動してきた。

昨年には、フィラデルフィアの主要幹線道路で崩落した橋を迅速に再建したことで、全米で話題となった。これは、初当選の知事にとって大きな政治的勝利となった。

橋を素早く修復した成果は、2028年の大統領候補として有力視されているシャピロ知事にとって、インフラ整の重要性を主張する際の、うってつけの論点になると大勢に評価された。

J・B・プリツカー・イリノイ州知事

イリノイ州のJ・B・プリツカー知事は、トランプ氏を攻撃し、バイデン氏を擁護することで、近年知名度を高めている。

ハイアット・ホテル・チェーンの後継者として、富豪の実業家という経歴を持つ。トランプ氏に対する批判を、ソーシャルメディアに次々と投稿することで注目されている。

6月末の討論会後、プリツカー氏はトランプ氏を「嘘つき」と呼び、トランプ氏は「34件の有罪判決を受けた重罪犯で、自分のことしか考えていない」と述べた。

ウィトマー氏と同様にプリツカー氏も、中絶の権利や銃規制などについて、民主党の進歩的な課題を次々と達成してきた実績がある。

その他の候補者

民主党は将来の大統領候補となる可能性のある人材を多く抱えているため、潜在的な候補者のリストは、これらの民主党員以外にも広がっている。

保守色の強いケンタッキー州で知事を2期務めるアンディー・ベシア氏は、昨年の再選以来、全米で注目されるようになった。

メリーランド州知事のウェス・ムーア氏は、同州ボルティモアのフランシス・スコット・キー橋の崩壊事故以来、このところ注目されている。

エイミー・クロブチャー上院議員とコーリー・ブッカー上院議員は、過去に大統領選に出馬した経験があり、民主党員の間でも知名度があるため、しばしば名前が挙がる。

激戦州で接戦を制したジョージア州上院議員のラファエル・ウォーノック氏も、バイデン氏の後継として名前が挙がっている。

(英語記事 Who could replace Biden as Democratic nominee?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c147de8wk8qo


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