2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月17日

 海警の粗野で乱暴なハラスメントは、ひよわで手なずけたと見做していたフィリピンがマルコス大統領の下で厳正な立場に転換したこと、フィリピンが米国との防衛協力を深化させつつあること、あるいは、フィリピンが南シナ海における中国の威圧的行動を積極的に公表して国際社会に告発する作戦に転じたとみられること、に中国が憤慨しているという側面が大きいように思われる。

 他方、フィリピンはSierra Madreを現状のまま維持することに賭けているように思われ、フィリピンは補給を今後も続けることになろう。中国のハラスメントも続くこととなり、間違って制御の利かない衝突に転化する危険が継続することになる。

米国はどうかかわるのか

 米国は米比相互防衛条約に対するコミットメントを確認し、条約は南シナ海にも適用されることを累次にわたり表明しているが、それだけでは、中国の海警と海上民兵による「グレーゾーン」の嫌がらせを抑止することはできない。上記社説には、どうしたら良いかの提言はない。

 フィリピンにもう少し出来ることがあるのかも知れないが、米国が抑止効果を狙うなら、近傍における沿岸警備隊の艦船・航空機によるフィリピンとの共同パトロールが考えられるかも知れない。より直接的な関与となれば、米国が補給に関わり支援することであろうが、これは事態をエスカレートさせる危険が大きく、ハードルは高いといわざるを得ない。

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