2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月18日

 第二に、中国の経済力、技術力は強く、米国を含めた西側諸国とも相当程度の相互依存関係がある点で、冷戦時代のソ連とは異なった状況にある。かつての冷戦がイデオロギーから政治体制、経済体制に及ぶ全面的な対決であり、相手方との相互依存が限られていたのとは異なっている。

 第三に、米ソの間では、累次に渡るベルリン危機やキューバ・ミサイル危機も経て、危機に至らないメカニズムや軍備管理の仕組みが構築されたが、米中の間では、そうした関係はできておらず、危機管理上のリスクが高い。

 第四に、米国の国内の分断は、かつてないほどひどい状況となり、トランプ支持の共和党人脈の間だけでも、対外戦略の基本について前述のような大きな立場の相違がある、といった具合である。

見直すべき現在の米国の立ち位置

 これらを踏まえると、今日の米国が米中対立に対処することは、冷戦時の米国が米ソ対立に対処するよりも難しいと考えられる。ところが、この論考を読んでいると、二人の著者は、米国の対応能力や中国の動向に影響を与える能力を極めて高く見積もっているように思える。こうしたことが可能であれば、それは一つの方策であろうが、実際に、米国の足下の状況を見れば疑問がわく。

 クローニグが対イラン強硬論を唱えた際と同様に、「米国の対応能力について最も楽観的な見積もりをする」との批判がこの論考にも当てはまりそうである。二人の著者の関心は、対中政策について現実的な処方箋を提示することよりも、理論から演繹した考えを示し、共和党の内外に、対中強硬姿勢を示すことで自らの存在をアピールすることに向けられているように思われてならない。

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