2024年5月14日(火)

Wedge REPORT

2009年4月28日

 その後、大胆な再編や戦略に打って出て、再び世界で戦える存在となったのは、日立製作所とNECのDRAM事業を統合したエルピーダメモリや、東芝のNANDフラッシュメモリー事業くらいです。両社とも現在は世界不況で苦戦してはいるが、坂本幸雄社長と西田厚聰前社長という、稀有なリーダーシップが鍵だったことは間違いありません。各社が生き残りをかけたシステムLSIは、結局目算がはずれ、行き詰まったルネサステクノロジ(日立と三菱電機の合弁企業)とNECエレクトロニクスが、来春合併することを決めました。この2社はずっと以前から大同団結すべきだと言われていた企業です。

 この間、国は危機感を示し続けたが、何もできませんでした。米インテルや韓国サムスンに対抗できるような、強力な日の丸半導体メーカー誕生を誘導できなかった原因は、初動の遅さにあります。各社が沈み込んでから動いても、世界シェアを取り返すことはできません。

 太陽電池メーカーは、現在、各社とも世界で勝てる技術を持っています。しかし、この数年の間に、必ず淘汰が進みます。昨年のスペイン・ショックはその第一波ともいえるでしょう。淘汰の波が終わって苦し紛れの合併を迫らなければならなくなる前に、世界シェアを取れる日本企業を1社か、多くても2社程度、育てあげるという目標を、国としても掲げるべきではないでしょうか。そのためには、中核企業に対する補助金や、思い切った税制優遇措置を打ち出すことも必要でしょう。

 まずいま必要なのは、国の太陽電池政策に一貫性を持たせることです。日本の太陽電池導入政策の決定プロセスを振り返ると、国として本気で太陽電池産業を振興させるというよりは、「経済産業省と環境省・与党間のエネルギー政策の決定権を巡る争いになっている」(環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長)側面がありました。

 ドイツの成功の鍵は、政府が「脱原発」を掲げ、「国民一人ひとりが通常の電力料金に加えて太陽電池買取分を負担する」と、国民全体で合意形成したことにあります。本質的な政治と国民の対話があったからこそ、Qセルズのような、シャープを抜き去る世界トップメーカーが短期間で誕生したといえます。

 日本が将来にわたって太陽電池産業で世界をリードしていくには、20年、30年後を見据えた長期的な目標をたて、国を挙げて対策を打つことがが求められるでしょう。

◆「WEDGE」2009年5月号より

 

 

 
 

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