政府の支援によって国内市場も活性化しつつありますが、世界に占める日本の割合は大きくありません。巨大需要地である、欧米や中国をいかにおさえるかがカギになります。モジュール(組立)工場はいくつか進出しているが、早く中核のセル工場も海外に持っていくべきでしょう。
また、「高級品だけではなく、汎用品との組み合わせも考えておくべき」(商社関係者)です。そうしなければ世界市場のシェアは取れない。携帯端末のノキア、サムスンはその好例だといえるでしょう。
本格的な海外生産に動いたのは、イタリアの電力会社エネルと提携したシャープくらいです。他の日本企業はまだ海外でのセル生産を発表していませんが、後発グループを技術力でリードしているいまこそ、大胆な行動が必要です。資金が必要なら専業メーカーとして株式公開させる、同業他社と統合する、国境や業種を越えた再編に打って出る、などの果敢な経営判断も欠かせません。とにかく必要なのはスピードです。
国がなすべきことは何か
一方、国の政策的なバックアップも欠かせません。具体的にいえば、中長期的に太陽電池産業を国の基幹産業として位置づけ、日本メーカーの積極性を促すような土壌を作る産業政策を取り、強力にバックアップすることが必要です。
そのひとつが、FITや各種補助金を打ち出し、グリッドパリティ(家庭用電力料金並みの発電コスト)を国内で早期実現することでしょう。国内で家庭用・産業用の需要が伸びれば、国内メーカーの安定した地盤となりうるし、マザー工場や研究開発の拠点を日本に残すことにもつながります。
もうひとつが、海外でも勝てる日の丸太陽電池メーカーの育成です。
格好の教訓は、日の丸半導体の凋落です。80年代から90年代初めにかけ、世界のトップを走っていた日本の半導体メーカーは、90年代に大きく凋落。ITバブル崩壊で見るも無残な姿となりました。最大の原因は、海外メーカーが果敢な投資でコスト競争力を磨いたのに比べ、日本の電機メーカーは総花的経営をしたことで、経営資源を集中できなかったことだと指摘されています。
国も危機感がなかった訳ではありません。経済産業省は01年に国内メーカーの製造部門を統合した「共同ファブ」構想を立ち上げました。これで各社は製造施設に大規模投資をする必要がなくなり、設計力が強化できるはずでした。
この構想には日本の大手LSIメーカー11社が参加しましたが、紆余曲折を経て結局破綻。各社が自社の利益を優先し、国も参加企業の意見を等しく尊重したため、強力なリーダーシップを取る企業が現れなかったのです。