2024年7月22日(月)

2024年米大統領選挙への道

2024年7月22日

「神聖化」という選挙戦略

 トランプ大統領は、共和党大統領候補受諾演説で、「神が味方してくれた」と述べた。この言葉には隠されたメッセージがある。

 まず、トランプ前大統領は「神が自分を守ってくれた」というメッセージを発信している。それを受けた支持者たちの中には、神によって守られている人間は清浄で汚れていないと理解する者もいる。

 現在トランプ氏が抱えている重罪犯や米連邦議会議事堂襲撃事件を煽った犯人というイメージは、この解釈によって消される。加えて、「神によって守られている自分は、清浄で汚れていないので、免責特権も得た」と主張できる。

 率直に言ってしまえば、暗殺未遂事件を利用して、いわゆる「神聖化」という選挙戦略を用いたのだ。事実が歪められ、司法制度が弱体化する点において、極めて危険な戦略であることを強調しておきたい。

民主党支持者の反応

 暗殺未遂事件後に撮影された右耳から血を流しながらも、高く拳を突き上げているトランプ前大統領の写真は、この段階ですでに大統領選挙を決定づけたという声がある。しかし、「トランプ神聖化」はどのぐらい持続力があるのか。

 東部コネチカット州在住の民主党支持者の夫婦に、暗殺未遂のときのトランプ前大統領の言葉などについて聞いてみた。2人はコロンビア大学で教育学の博士号を取得した。夫(70代)は、都市部に住む子供の教育を向上させる団体のトップを務めている。一方、妻(60代)はコロンビア大学で教鞭をとっていたが、現在は退職している。

 まず、夫はトランプ前大統領が銃撃を受けても、拳を突き上げて「戦う」といった言葉を「自分のために戦う」決意であるという意味に解釈した。また、現在の民主党にはトランプ前大統領の犯罪の動機と記録について、米国民に明らかにしてくれるリーダーが存在しない点に強い不満を持っている。

 彼は、バイデン大統領が選挙戦から撤退し、元検事のカマラ・ハリス副大統領がその役割を果たしてくれることを期待していた。

 一方、妻は例の一枚の写真を通じて、トランプ前大統領を「神のような存在」にするのは危険であると考えている。


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