支持を広げる余地あり
第三に、ハリス自身の実績と経験に対する一定の評価がある。
ハリス氏に関する米マスコミの論評の中には、2020年大統領選にいったん名乗りを上げたものの、選挙態勢の不備から党大会指名争い前の予備選段階で早々に戦列離脱した点などが「汚点」として指摘されてきた。
しかし、バイデン氏は、ハリスが当時上院議員としてトランプ弾劾審議の際に雄弁をふるったことなどを高く評価し、副大統領候補に抜擢、その後、ナンバー・ツーとしてホワイトハウス入りして以来、政治経験を積み上げてきた。
つい最近まで、再選をめざしていたバイデン氏の副大統領候補として、精力的に各州での選挙運動に乗り出し、すでにある程度“実戦経験”があることも指摘されている。
ハリス氏については、正式立候補する前の段階で公表されていたいくつかの「トランプ VS ハリス」に関する世論調査で、トランプ氏が「やや優勢」との分析がある一方、「ほぼ互角」とする指摘もあったこと自体、同氏について全米の民主党支持者の間ですでに一定 の認知度と評価が定着しつつあったことを示している。
それが、大統領の全面的支持の下で最有力候補となったことで、正式に党大会で指名された場合、ハリス氏の支持率はさらに上昇し、大会後、トランプとの形勢が逆転する可能性も否定できない。
元司法長官としての追及
第四点目に、トランプ氏が個人的にハリス氏を恐れる“特殊事情”も話題に上っている。 すなわち、かつてカリフォルニア州で検察のトップである司法長官を務めたハリス氏の経歴と関係したものだ。
ハリス氏は当時、州司法長官を2期務め、この間に、カリフォルニア州での麻薬取締りや政治不正摘発に辣腕を振るった実績を背景に連邦上院議員に初当選した経緯がある。そして上院議員時代には、銃砲所持規制やトランプ氏にまつわるロシア疑惑事件などについても、厳しく追及してきた敏腕ぶりも評価されている。
そのハリス氏がもし、大統領に就任することになった場合、これまですでに、摘発対象となってきた脱税、背任などトランプ氏に関わるいくつかの事件について、大統領権限を生かし捜査に一段と弾みがつく可能性が指摘されている。